山崎 惜別の中前打 涙で楽天とお別れ

◆楽天6-1ロッテ
 今季限りで楽天を退団する山崎武司内野手(42)が10日、このチームで最後の試合となるロッテ戦で“有終の美”を飾った。7回に代打で登場し、中前へクリーンヒットを放った。これが楽天での820本目の安打。試合後にはお立ち台に呼ばれて、球団旗揚げ以来7年にわたって応援してくれた東北のファンに涙で別れを告げ、最後にはナインから胴上げされ、6度宙を舞った。
 1万7931人の大歓声に迎えられ、山崎が悠然とバッターボックスに向かう。7年にわたって在籍した楽天での最後の打席。ホームベース付近に手のひらで触れると、ゆっくりとバットを構えた。
 「イーグルスファン、仙台の皆さんと別れるのは、今でも諦めがつかないぐらい寂しい。これまで仙台で悪いことは一切なかった。どれもいい思い出ばかり」。いろいろな思いが走馬灯のように駆け巡る。7回1死走者なし。吉見の初球、外寄り141キロをファウル。2球目。再び投げてきた外寄りの141キロをこん身の力で振り抜き、鮮やかに中前に運んだ。
 「久々に芯を食った当たり。本当は本塁打を狙ってたけど、センター前になった。あの打球を見て、オレはさびてないんだと思いつつ一塁に向かった」。一塁で代走・中島と交代すると割れんばかりの拍手。山崎はヘルメットを取ってファンに応え、何度も手を挙げながらベンチに下がった。
 前日は知人、友人からの電話がひっきりなしで就寝できたのは日が替わった午前4時ごろ。それまで9試合で出場機会なし。実戦から遠ざかっていたせいか、打撃練習中も足がガクガクするほどだったが、最後の打席で会心の一打を放った。
 試合後はスタッフの計らいでお立ち台が用意された。勝利の立役者としてファンを喜ばせてきた場所も、今回ばかりは勝手が違う。「こんなに寂しいヒーローインタビューは初めて。最後の最後に仙台のファンが打たせてくれた一本だった」。真っ赤に目をはらしながら惜別の言葉を重ねた。ベンチを見ると、きつくしかってきた若手たちが涙を落としている。余計に胸が熱くなった。
 ナインに胴上げされ、100キロ近い巨体が6度宙に舞った。「胴上げされるのが夢だった。かわいい後輩たちが、僕ができなかった優勝をやり遂げてくれると思う。それを信じてみんなとお別れする」。山崎も涙、ナインも涙、ファンも涙。ミスターイーグルスが、惜しまれながら杜(もり)の都を去る。(鶴田真也)

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