山形県内の温泉施設から各自治体に納付される入湯税が、東日本大震災後に大幅に落ち込み、自治体によっては前年同期比で6割以上も減ったことが分かった。入湯税の納付状況は、観光客の宿泊など施設利用の実態をほぼ反映しているとされる。県旅館ホテル生活衛生同業組合は、福島第1原発事故による風評被害を裏付ける証拠になるとみて、賠償をめぐる東京電力との交渉の場で同様の数字を提示したもようだ。
河北新報社が県内の主要な温泉地を抱える9自治体に聞き取り調査したところ、震災と原発事故が起きた3月の入湯税は、蔵王温泉のある山形市で前年同期比60.0%減、銀山温泉のある尾花沢市で同64.0%減、肘折温泉のある大蔵村で同63.1%減など大幅に落ち込んだ。
減少幅はおおむね3、4月が5~6割、5、6月は約3割に上った。7月以降の税収は回復傾向にあるが、山形市などは9月段階でも前年同期を下回ったままだ。
組合は8日に東電と会合を持ち、3~6月の入湯税納付状況について、自治体単位より詳しい温泉地ごとの数字を示したとみられる。東電からは、この数字を基に風評被害を認めるかどうかの明確な回答はなかったという。
佐藤信幸理事長は「原発事故との因果関係を証明するのに、前年との比較ができる入湯税は最適なデータだ。県内の温泉地が大きな風評被害を受けたことを認めてほしい」と話している。
原発事故による国内観光への風評被害については、政府の原子力損害賠償紛争審査会が福島、茨城、栃木、群馬の4県を認定し、山形は対象外。東電は山形県全体の追加認定は難しいとの見解だが、事業者との個別協議には応じる意向で、組合と事前の話し合いを続けている。