仙台市内の酒店や飲食店で、山形産ワインの人気が定着してきた。山形はブドウだけでなく、ワインでも国内有数の産地。ほとんどのワイナリーが地場産ブドウで醸造することから、安全安心の観点でも支持が集まっているようだ。ただ、全国的な評価が上がるにつれ、商品確保は難しくなりつつある。
仙台市青葉区の百貨店藤崎の売り場では数年前から国産ワインを積極的に取り扱いだした。現在は輸入物を含め計約800本のうち約50本が国産。その過半数が山形5社の銘柄だ。
ワインを担当する石沢洋子さん(26)は「個性豊かで、どれも和食に合わせやすい。普段用にも贈答用にも根強い需要がある」と話す。
仙台市青葉区のJR仙台駅にある地酒・ワイン店「ケヤキ」でも山形の2社を扱う。酸化防止剤無添加の1000円台と、甘口の3000円台が特に好評だという。
国産ワインを求める人が増えており、副店長梶谷貴子さん(35)は「隣県でなじみ深い山形産は薦めやすい」と語る。
山形県内には、東北最多の11のワイナリーがある。国税庁によると、ワインを含む果実酒の12年度の生産量は神奈川、山梨などに続き全国6位。
統計上は国産ワインであっても実際には、輸入原料を国内で加工した製品も含まれる。山形産の場合、地場の原料に限定している比率が高い。
「ブドウ畑の土壌を含む環境の全てがワインの味を左右する。宮城から近く、気軽に畑や工場の見学ができて、生産者と直接話せるのもいい」
仙台市内でフランス料理店3店舗を展開し、国内外のワイン生産者と交流がある「マキュイジン」の社長板垣卓也さん(39)は、山形産人気の背景をこう説明する。
全国のワイナリーが出品する「国産ワインコンクール」では昨年、朝日町ワイン(山形県朝日町)と高畠ワイン(高畠町)の計3銘柄が、最高賞の金賞に輝いた。安心感だけでなく、品質面の評価も高まっている。
仙台のみならず、全国の酒販業者や消費者からも引き合いが増えている。南陽市の酒井ワイナリー社長の酒井一平さん(35)は「原料が足りず、簡単に増産できない。完売続きでは、顧客離れが心配」とやきもきする。
天候などでブドウの収量は毎年変化し、増産には5年単位の時間がかかる。県外の大手業者が山形県内でブドウを買い付ける動きもあり、全11社でつくる県ワイン酒造組合は「好評なのはありがたいが、原料確保が毎年の悩み」と現状を明かす。