山形・庄内の北限のスダチが出荷4年目 仙台への流通が目標

 山形県庄内地域で「北限のすだち」と称してスダチの生産が広がりつつある。2010年、温暖化による適地の北上を見込んで県が試験栽培を始め、民間の出荷は今年で4年目を迎えた。県内におけるかんきつ類特産化の成功事例となるか、期待がかかる。(山形総局・奥島ひかる)

県主導で試験栽培開始 高温対策不要   

 スダチの主産地は徳島県で、出荷量は約3800トン(21年)と全国の99%を占める。庄内では17年に一般農家での栽培が始まり、100本以上の苗木が植えられた。現在、鶴岡市を中心とした4市町の17人が生産する。昨年は約130キロを地元の産直や飲食店に卸し、魚の付け合わせなどに使われている。

 栽培を主導した県庄内総合支庁産地研究室は、10年にかんきつ類の試験栽培に着手した。参考にしたのは06年に農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が公表した、2060年の温州ミカンの栽培適地予測だ。東北の適地は宮城、福島と山形各県の主に沿岸部と限定的で、庄内が全国の北限だった。

 植えた9種類のかんきつ類の中で、雪囲いなどの対策により冬を無事越したのはスダチやユズ、カボスなど。そのうち比較的早い9月に収穫期を迎えるスダチは、特に安定した生育を見せたという。他品目についても研究を続けている。

 同研究室の明石秀也専門研究員は「温暖化を逆手に取る新たな選択肢として提示していきたい。スダチは東北で出回る量自体が少なく、当面は仙台への流通が目標だ」と語った。

 生産者も栽培に手応えをつかんでいる。鶴岡市の伊藤三郎さん(74)ら4人は共同で7年前から20本を育てる。収穫を間近に控えた2日には、たわわに実った濃い緑色の実が直径3センチ以上に成長していた。

 普段はコメやブドウ、サクランボを育てる伊藤さん。近年、高温障害が相次ぐ。一方のスダチは特別な対策が不要で、育てやすさを実感する。「『北限』という付加価値が魅力。需要さえあれば栽培を拡大したい」と意気込む。

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