山形産サクランボ、「双子果」多発 昨夏の高温影響、雌しべ増加 規格外扱いで市場価値半減、県は収量減予想

山形県が生産量日本一を誇るサクランボに、昨年夏の高温の影響で異変が見られている。実が二つ結合した「双子果」が多発。規格外となるため、作柄にも影響が出る。県は21日、収量を5段階評価で下から2番目の「やや少ない」と予想する調査結果を公表した。(山形総局・奥島ひかる)

 サクランボの実が育ち始めた5月上旬、上山市の枝松祐悦さん(59)の園地では、「紅秀峰」を中心に20~40%の双子果が確認された。通常は1%未満といい、異例の事態だ。市場では価値が半分ほどに下がるため出荷は断念し、普段以上に丁寧な摘果作業を迫られた。

 この春は近年多発していた霜の被害を免れ、豊作が期待されていた。枝松さんは「今年はせっかく実がなったのに、結局は気候変動によるマイナスの影響が出る」と肩を落とす。

 県園芸農業研究所によると、サクランボの花芽が形成されるお盆前後に高温が続くと、雌しべが2本に増えやすいという。高温がどう発生に関与するのか、詳しい原因は分かっていない。県の定める出荷規格では規格外となるため、早めの摘果を推奨している。

 県が公表した今年の予想収量は平年比91%の1万2100トンで、平年並みとなった昨年(1万3000トン)を900トン下回る。収量が平年を下回るのは霜害の影響が大きかった2021年以来で、過去10年間で3番目に少ない。

 異例の現象を逆手に取ろうとする動きもある。天童市の「王将果樹園」は、両方の実が均一に育った双子果は取り除かず、収穫後に仕分けして訳あり商品として自社で販売する方針だ。味には影響がないとして、ハートのような珍しい形を楽しんでもらう。

 同園の矢萩美智社長(48)は、気候変動で今後も双子果が増える可能性を指摘。「天気にあらがって双子を減らすのは難しい。県などが双子の多発も加味した販売戦略を考えることも必要だ」と求める。

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