山形県酒田市の老舗酒造会社「楯の川酒造」が、県産米「はえぬき」を使った韓国の伝統的な濁り酒「マッコリ」を開発し、販売を始めた。
これまで日本酒にあまり馴染みがなかった若者や女性に、まずは同じ米を原料にしたマッコリから慣れ親しんでもらうことで、「いずれは、日本酒を飲んで欲しい」との思いを込めた。同社では、先月中旬に初の支店となる「東京事務所」を開設。今月1日にはニューヨークにも事務所を開き、国内外で新しい市場を開拓しようと本格始動している。
同社は、1832年の創業。銘酒「楯野川」を中心に販売してきたが、日本酒自体に「年配のお酒」というイメージがつきまとい、いかに若者に親しんでもらうかが課題となっていた。
6代目となる佐藤淳平社長(32)は、日本酒のどぶろくや濁り酒と異なり、若者らが比較的先入観を持たずに飲める酒としてマッコリに着目。県産米を使った“和のマッコリ”を提案しようと、20回以上の試作を重ねたが、納得のいく味を生み出せずに模索が続いていた。
このため、試しに若手スタッフにレシピを託したところ、隠し味として本場・韓国の酒蔵でも行われる「麦麹」をバランスよく配合。ヨーグルトのような甘みと、日本酒のもろみが同時に楽しめる酒ができた。
味が濃いため、ロックやソーダ割り、カクテルなど自分好みの飲み方も楽しめ、試飲を頼んでいた酒屋も「これなら売りたい」と、うならせる商品となった。
佐藤社長が、「私の試作品は三振ばかりだったけど、最後は逆転満塁ホームランだった」として、「ホームランまっこり」と名付け、昨年末から販売を始めた。
当面は、国内のみの販売だが、日本酒への入り口的存在として、同社の看板商品の一つとしたい考えだ。また、いずれは本場・韓国でも販売したいという。
また、同社では、今回のマッコリ開発を機に、新しい日本酒市場を切り開こうと、東京事務所を開設。国内の販売店舗数拡大のほか、アジアやヨーロッパ圏の販路開拓も視野に入れる。ニューヨーク事務所では北米を中心に市場開拓を目指す。
佐藤社長は「海外では日本食が当たり前のように食されている。『洋食ならワイン』というように、日本酒が当たり前に飲まれれば、それを見た日本人もおのずと興味を持ってくれるはず」と期待する。
(2011年2月8日 読売新聞)