全国各地の神社で1月15日前後(小正月)に行われる「粥占(かゆうら)」「筒粥(つつがゆ)神事」などと呼ばれる神事がある。もともとは中国から伝わった風習で、竹筒などに米や豆などの穀類を入れ、その煮え具合や(しばらく放置して)カビの生え具合を見ることで1年の収穫などの吉凶を占うものだ。なかには、その年の世相や災害を占う神社もあるが、過去に東日本大震災や熊本地震も予言されていた経緯があるため、軽視することはできない。
そして今年、またも「地震に注意」と出た神社があったという。2017年の粥占、その結果をまとめて紹介することにしたい。
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■過去の的中例がハンパない!
筆者は毎年、各地で行われる粥占の結果に大いに注目しているが、常に印象に残る結果が出るのは諏訪大社(長野県)の粥占だ。特に2011年1月の諏訪大社・春宮で行われた「筒粥神事」では、世相が「三分五厘」という結果となった。これは、「三行半」(みくだりはん)を意味する“最凶”と解釈されるため、神官からは「今年は怖い1年。過去20年間で最も悪い結果が出た」とのコメントが発表されたほどだ。そして、2カ月後となる2011年3月11日、あの東日本大震災が発生した。
また、昨年の記事でも書いているが、2015年3月15日に佐賀県みやき町の千栗(ちりく)八幡宮で行われた「御粥試(おかゆだめし)」では、地震について「見ゆ」つまり「起きそうだ」との結果が出た。すると、それから1カ月後となる4月14日、熊本地震が発生して大きな被害となった。同神社では2005年にも「地震に注意」との結果が出たが、その5日後、神社から60kmの地点を震源とする福岡県西方沖地震(M7.0)が発生し、大きな話題を呼んでいた。
では、以下に今年の各地の粥占の結果を挙げていくことにしよう。
■大山阿夫利神社(神奈川県伊勢原市)
大山阿夫利(おおやまあふり)神社では、1月7日に「筒粥神事」が行われ、宮司が「春先は少し暖冬気味で、夏の暑さも注意しなければいけないが、お米類に悪い数字がなく「1年を通じて順調で平穏な年になるのでは」(タウンニュース、2017年1月13日号)と総括する結果となった。
昨年と同様に、今年も各地の粥占では全体的に世相は「平穏な年になる」という結果が多かったものの、以降に紹介するように決してすべてがそうだったわけでもない。
■師岡熊野神社(神奈川県横浜市)
師岡(もろおか)熊野神社で今月14日に行われた「筒粥神事」は、なんと今年で「第1068回」を数えるという千年以上の歴史がある行事だ。今年の景気などを示す「世の中」の結果は「半分」と出たが、この数年では見られなかった悪い結果なのだという。ちなみに、昨年の結果は「七分」だった。災害に限らずとも、何らかの世相的に良くないことが起きるという暗示なのだろうか。
■諏訪大社(長野県)
粥占としては最もよく知られた諏訪大社の「筒粥神事」では、前述のように東日本大震災の年には“最凶”の結果が出ていた。では今年はどうだろうか? 今月15日に下社春宮で行われた神事の結果だが、世相を表す「世の中」の結果は「3分6厘」(満点は5分)で、昨年と同じ結果となった。
大社によると、粥の入りに今年はばらつきがあったので、結果は昨年と同じであっても、質的には少し落ちるという。そのため、念のために注意して1年を平穏に過ごしてほしいとの総評となった。昨年は同じ3分6厘でも熊本地震が起きたので、たしかに油断は禁物だろう。
諏訪大社には、粥占以外にもその年の吉凶を判断できそうな神事がある。その一つが「御神渡り(おみわたり)」だ。これは、凍結した諏訪湖に亀裂が入って隆起する現象だが、これが観測できない「明けの海」の年は凶年とされる。阪神・淡路大震災(1995年)も東日本大震災(2011年)も、「明けの海」の年に発生している。気になる今年だが、最新の状況では諏訪湖が完全に凍結せず、御神渡りの発生は微妙なところだ。
また、東日本大震災が起きた2011年も今年も、前年の「御柱祭」で死者が出ているという共通点がある。果たして、これも「凶相」といえるだろうか? 気になるところだ。
■伊太祁曽神社(岐阜県高山市)
伊太祁曽(いたきそ)神社では、1月14日に「管粥(くだがい)神事」が行われた。この神社の粥占の結果は、特に注目しなければならない。というのも、五輪などスポーツの勝敗を当てるのも得意(?)で、過去にはトリノ五輪での荒川静香選手の金メダル獲得(2006年)、ソチ五輪で浅田真央選手がメダルを逃したこと(2014年)、2013年のプロ野球で巨人と楽天が優勝することも的中しているのだ。
そればかりではない。災害に関しても伊太祁曽神社の予言通りになったことがある。2015年の神事では、天災の項で「雪と台風に注意」と出たが、その年は鬼怒川堤防の決壊をはじめ、台風18号の大雨による洪水など、水による被害が多発した年となっている。
さて、そのような神社の今年の結果だが、なんと天災の項目で「地震に注意」という結果が出た。これは、今年中に岐阜県周辺あるいは中部地方のどこかで大地震が起きるということを示唆しているのだろうか。
■大災害は、起きる!
こうして見てきた神社を除けば、今年は総じて「平穏」といった結果が多いのだが、それは昨年も同様だった。しかし実際には、九州で熊本地震が起きている。たとえ総じて「平穏」との結果が出ていても、その神社が属する地方だけのことかも知れず、油断は禁物だ。
また、これから2月や3月に結果が出る神社もあるため、現時点で大事には至らないだろうと思っても、決して安心はできない。昨年も、3月に佐賀県の千栗(ちりく)八幡宮で「地震に注意」と出てから、1カ月ほどして熊本地震が起きたのだ。粥占は全国各地の神社(出雲系が多い)で行われているが、その多くは農作物の収穫などを中心に占われる。それに関連して天候などを伺うところも多いが、「地震」に的を絞った質問を行う神社はそれほど多くない。しかも、毎回「地震に注意」と出るわけではないので、今年の伊太祁曽神社のような結果が出た時には、日本全体に影響を及ぼすような3.11級の大震災、あるいは、その周辺で大地震が起きることを想定しておかなければならないだろう。