東日本大震災からの復興を目指し、ノルウェーを視察した岩手、宮城両県の漁業・水産関係者が、国内の水産業界再生に向けた提言をまとめた。先進地ノルウェーの制度を参考に、資源管理など国や行政を挙げて取り組むべき課題と、漁場の適正管理や加工の機械化など当事者で対応可能な内容を盛り込んだ。
提言は(1)漁業・水産業を持続可能にする資源管理の徹底(2)漁船、魚市場、加工、運搬などの効率化(3)漁獲・養殖から販売まで統括する仕組みによる水産業の融合産業化-など6項目に集約した。
資源管理については「魚は国民全員の資源」と明記。魚種ごとに漁獲量を定める日本の「TAC制度」は課題が多く、資源減少や水産加工会社の収益悪化を招いていると指摘。船ごとに漁獲枠を設定し、監視のため通信衛星漁船管理システム(VMS)の搭載を義務付けることを提案した。
漁業・水産業の拠点となる魚市場に関しては、水揚げの効率化と衛生管理の向上を提起。船から直接水揚げするフィッシュポンプなどの活用や、国際的な食品衛生管理方式(HACCP)の導入、厳格な衛生管理を実現するための情報の記録を求めた。
16人の漁業者や水産業者が参加した視察は9月、資源管理を徹底する操業の現場や、機械化を進めた加工施設などノルウェーの現状を学んだ。提言は帰国後の研修会で参加者が報告した内容を基に、視察のリーダーを務めた宮城大の大泉一貫副学長がまとめた。
大泉副学長は「学者ではなく、現場の漁業者らが必要と考えたことを提言した意義は大きい」と話した。提言は宮城大「震災復興まちづくり支援プロジェクト」のウェブサイトで公開している。