岩手・滝沢市、返礼品に市長家族栽培のコメをお買い上げ 専門家「倫理的に問題」、総務省「聞いたことないケース」

 岩手県滝沢市のふるさと納税で、武田哲市長の家族が栽培しているという米が返礼品になり、市民から問題視する声が上がっている。総務省は「法律上は問題ない」とする一方、専門家は「税金で買い上げる返礼品だけに倫理的な問題はある」と指摘する。

就任後は家族が中心

 問題視されている返礼品は「武田家のお米」。ふるさと納税のポータルサイトなどによると、きらほ、銀河のしずくといった県産銘柄米をアイガモ農法で栽培している。

 市によると、武田家のお米は2015年11月に返礼品となった。武田氏が22年11月に市長に就任して以降は、家族を中心に作っているという。地元百貨店のウェブサイトで購入できる同じ商品(23年産)には販売者欄に市長名が記されている。

 返礼品の調達費用は実質的に地方自治体が負担する。滝沢市では調達などを委託業者が担う。市は23年度、ふるさと納税の寄付額約9000万円のうち、調達費や委託料など4500万円を業者に支払った。

 市内の70代男性は「市の金で自分の家の米を買い上げているように見えて仕方がない」と批判。40代男性は「市長に就任した時点でやめるべきだったのではないか」と首をかしげる。

「公共工事と異なる」

 総務省の担当者は「首長が関係する商品が返礼品になっているケースは聞いたことがないが、地方税法上は特に除外するルールはない」と話す。

 弘前大の蒔田純准教授(政治学)は「税金で買い上げる返礼品は公共事業と構造的に同じもの」と指摘。「市長や親族の法人に公共工事などの発注を禁止する政治倫理条例を持つ自治体もある。条例がなければルールには抵触しないだろうが、高い倫理基準が求められる」と強調する。

 滝沢市の倫理条例は事業の発注規制などを設けず、市長の資産公開に限った内容になっている。返礼品の武田家のお米について、武田市長は市を通じて「寄付者が自ら選択した品を贈る制度であり、市が発注する公共工事とは制度が異なる」との見解を示す。

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