岩沼白菜、全力アピール ブランド化へコンテスト

東日本大震災で被災した岩沼市玉浦地区の生産者らが、地元産の白菜を「岩沼白菜」としてブランド化する活動に取り組んでいる。オリジナルメニューを競う 「白菜料理コンテスト」を開催し、その多彩な味わいをアピール。知名度を高め、地域農業の復興のシンボルにしたい考えだ。(岩沼支局・成田浩二)

すいとん、カレー、お好み焼き、キッシュ、クレープ。1月31日、JR岩沼駅前広場で開かれたコンテスト会場には、白菜料理とは思えない独創的なメニューが並んだ。
あらかじめ白菜料理のレシピを募り、優秀な5点を選んで調理した。来場者は各メニューを食べ比べ、一番おいしかったものに投票。約200人が吟味した結果、お好み焼きが最多得票で見事グランプリに輝いた。
「白菜と言えば鍋やキムチなどが定番だが、その調理法は実に幅広い。コンテストを通じて意外なおいしさを知ってもらえたのではないか」。主催した「岩沼園芸研究会」会長の農業八巻文彦さん(45)が期待する。
岩沼園芸研究会は、岩沼市の農家や仙台市のフードコーディネーターら15人で組織。津波で浸水して担い手がいなくなった農地の再生に向けて知恵を絞ろうと、2013年3月に発足した。
目を付けたのが、塩害に比較的強い白菜だった。もともと玉浦は白菜の一大産地で、葉が柔らかく甘みがあると評判だった。「玉浦白菜」とも呼ばれ、昭和初期 には東京の市場を独占するほどの勢いがあった。しかしその後は「栽培しにくい」「傷が付きやすい」などの理由から、徐々に他産地に取って代わられた。
研究会は、全国一の白菜出荷量を誇る茨城県の農家への研修旅行などを行いながら、少しずつ白菜の作付けを拡大。伝統品種「松島純2号」の生産にも挑戦している。
今季は各地で白菜が豊作で、買い取り価格が予想以上に下がった。「農業にあらためて魅力を感じてもらうためにも岩沼白菜をブランド化し、収益性を高めたい」と八巻さん。今後も地元飲食店などと連携して付加価値を創出したい考えだ。
こうした動きに連動し、岩沼白菜の応援ソングもできた。岩沼市のミュージシャン猪股秋彦さん(28)は自作の歌「白菜ボーノ!」をイベント会場などで披露し、その魅力を伝える。「僕も岩沼白菜が大好き。愛情をたっぷり込めて歌っています」と声を弾ませる。
震災が、大切な地域資源を浮かび上がらせた。もう一度、玉浦を実りの大地にしたい-。岩沼白菜には、逆境をバネに立ち上がった人々の夢と情熱が詰まっている。

<メモ>農水省のまとめでは、宮城県の2013年産白菜の出荷量は3710トンで全国の都道府県で22位。1位は茨城県の22万3900トン、2位は長野県の19万8800トン。名取岩沼農協によると、岩沼市の13年度の白菜出荷量は136トンだった。

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