[東京 15日 ロイター] – 政府は15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示した。岸田文雄首相は、先行きの不確実性が高まる中で政府と日銀との連携が重要だとし、政府としては構造的な賃上げを最重要課題として取り組んでいく考えを示した。 <物価上昇率1―2%定着なら「量的・質的緩和の解除を」> 政府の資料によると、デフレ脱却に関連する主要経済指標は消費者物価指数と単位労働コスト、GDPデフレータとGDPギャップ。 諮問会議では、柳川範之委員が賃金と物価の安定的な好循環を目指すため価格転嫁対策や最低賃金の引き上げ経路の提示などが必要とし、財政政策は潜在成長率の引き上げと社会課題の解決に重点を置くべきと指摘した。 日銀の政策については清滝信宏委員が、物価上昇率が1─2%程度に定着すれば量的・質的緩和を解除すべきと主張し、1990年代末以降のトラウマのために政策判断が遅れてはいけないとの考えを示した。 会議後に記者会見した後藤茂之経済財政相によると、同会議では「人々の物価観と成長期待をともに高め、デフレに後戻りしないとの確信を広く醸成すべきだ」との声が上がった。 <日銀、下振れリスクには「丁寧な対応必要」> 政府の資料によると、植田和男日銀総裁は4月28日に決定した金融政策運営や政策レビューの方針を説明。後藤経財相によると、植田総裁は会議で、賃金上昇を伴う形での2%物価目標の持続的・安定的な実現に向け、粘り強く金融緩和を継続していくと説明した。 日銀が実施する政策レビューについて後藤経財相は、政府・日銀の共同声明に諮問会議で物価や経済などについて定期的な検証実施が盛り込まれていることに触れ、「われわれも定期的な検証が必要との認識はもちろん持っている」と述べた。諮問会議で賃金動向も含め、丁寧にフォローしていく方針。 経財相は、日銀が検証を実施していることが「政策決定の足かせになるわけではない」と日銀が説明しているとして、「今後、いろいろな下振れリスクや経済・金融に生じている変化などには丁寧に対応していく必要がある」と述べた。 岸田首相は会議の締めくくりあいさつで、日銀との関係について「政府と日銀が密接に連携を図りつつ、マクロ経済運営を行う重要性が高まっている」と指摘した。 また「人への投資、グリーン、経済安全保障など、市場や競争に任せるだけでは過少投資となりやすい分野が今後の成長の鍵となっていく」とし、政府の働きかけで民間投資を喚起し、「デフレ脱却と持続的な民需主導の経済成長の実現を目指す」と述べた。 (竹本能文、杉山健太郎、和田崇彦 編集:宮崎亜巳、青山敦子、田中志保)