島民の悲願「出島大橋」ついに開通 女川町長「ここからが大事」 島に新たな歴史刻む〈宮城〉

宮城県女川町の離島・出島(いずしま)と本土を結ぶ「出島大橋」が12月19日、開通しました。橋の開通は半世紀にわたる町の悲願で、島民からは喜びの声が聞かれました。 島民 「夢のような橋、40何年もかかってようやく架かった。本当にうれしい」 開通式に立ち会った島民の中には、家族の写真を手に参加した人も。その日を見届ける前に去年、亡くなったそうです。それはかなわない夢だと思っていました。 記者リポート 「離島出島へとつながる出島大橋です。島民にとって40年以上の悲願の橋が、きょう、いよいよ開通の日を迎えます」 19日は開通を記念した式典が、島と本土の2カ所で同時に開かれました。全長367メートルの出島大橋は町が事業費167億円をかけて整備しました。これまで島と本土をつないでいたのは1日3往復の船だけ。40年以上前から橋の建設を要望していた島民にとって出島大橋は長年の悲願でした。 島民 「感慨深いというか、うれしいの一言」 東日本大震災の時、一時孤立した出島。橋の開通によって町の中心部まで車で15分ほどで行き来ができるようになり、避難道路としての役割が期待されます。 女川町 須田善明町長 「この事業が結実したことを皆さん自分事のように喜んでいただいた。本当に胸がいっぱいになる。これが終わりではなく、ここからが大事。そのことを改めて、みんなで確認したい」 そして、12月19日午後3時。出島大橋で一般車両の通行が始まり、島に新たな歴史が刻まれました。

仙台放送

女川・出島大橋、あす開通 陸路で町中心部へ15分 観光振興など期待

 女川町の離島・出島と本土を結ぶ出島大橋が19日、開通する。離島航路が唯一の移動手段だった島が、陸路の完成によって町中心部と車で約15分の距離になる。医療機関へのアクセスが向上、住民の交流活発化や観光振興が期待される。

 橋の全長は364メートル、全体の重さ約4100トン。総事業費は約170億円で、橋の本体工事が2017年に始まり、架橋作業は昨年10月25日から3段階に分けて実施し、11月に本土と島に橋を架けた。以降は町道の舗装などを行った。

 開通後の観光誘客に向け、島では地域おこし協力隊員が積極的に活動している。23年8月に初の協力隊員となった塩釜市出身の鹿又陸さん(30)と、仙台市出身の佐々木理人さん(30)が中心となり、出島で自然と共生したサウナ造りを進め、19日に開業する。

 観光客の受け入れ環境は橋開通後に整える。町は出島、寺間両地区にスロープを付けたバリアフリーのトイレを整備する。

 町の悲願だった橋の開通でにぎわいが生まれることが想定される一方、「昼夜問わず島にいろいろな人が来ると防犯面が心配だ」と口にする住民が少なくない。

 島の人口は11月末時点で90人でほとんどが高齢者。11月には石巻署の赤間博之署長が島民に注意喚起の講話を行い、町も防犯カメラの設置を検討している。

 19日は午前10時、本土側と出島側でそれぞれ記念式典を開く。町上空を航空自衛隊松島基地(東松島市)の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行して祝う。渡り初めでは、それぞれの式典場所から橋の中央で合流する。午後3時から一般車両の通行が可能になる。

 悲願の実現が目前に迫り、出島架橋促進期成同盟会の須田勘太郎会長(84)は「島民の夢が形になるのは喜ばしい。当日どんな感情になるのか想像がつかない」と話した。

橋カード2000枚、あす無料配布

 県東部地方振興事務所は、景観や架橋技術が優れた橋を紹介する「橋カード」プロジェクトに乗り出した。第1弾として女川町の「出島大橋」カードを作製し、19日の開通に合わせて町内で配布する。

 カードは縦63ミリ、横88ミリで名刺よりやや大きいサイズ。表面に出島大橋の写真のほか、橋の概要と位置情報を説明するQRコードを付け、より詳しい情報にアクセスできるようにした。裏面には長さや構造といったデータ、特徴などを明記した。

 女川町の地元市場ハマテラス内のインフォメーションカウンターで19日正午から午後3時まで、無料で配布する。一人1枚に限定して約2000枚用意し、なくなり次第終了。翌日以降は町内の観光施設などにカードを置く。

 東部地方振興事務所は土木事業への関心を高めてもらおうと初めてカードを企画した。管轄する石巻地方の橋を順次カード化していく考えだ。

 担当者は「暮らしている地域の橋をきっかけに、土木に理解を深めてもらい、興味も持ってほしい」と期待する。

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