嶋捕手優勝振り返る 「勝ちたい気持ち前面に」

 今までやってきたことが報われた。優勝の瞬間、そう思いました。そして、いい時も悪い時も温かい声援を送ってくれたファンの皆さんと、ここまで一緒に戦って来られて本当に良かったと喜んでいます。
 今季はジョーンズ、マギーがチームの柱となり、(松井)稼頭央さんが主将としてさまざまな気遣いをしてくれました。そこに銀次、(枡田)慎太郎、岡島、島内がうまく絡み、一人一人がいい味を出しました。捕手の立場から見れば、嫌な打線だったと思います。
 投手陣では田中と則本の力が大きかった。チームが期待していた若手が期待通りの結果を出せない中、2人がいなければ、この位置にいられなかったはずです。
 チームとしてのターニングポイントは交流戦だったと思います。優勝争いをする中で「負けて悔しい」「勝ちたい」という気持ちが全員に出てきました。それが最後まで続き、リーグ制覇に結び付いたと感じます。
 今季は自分の意識にも変化がありました。きっかけは開幕前の星野監督の言葉。「ことしはお前に任せた。捕手として、リーダーとして引っ張ってくれ」。こう言われて意気に感じない選手は駄目だし、その思いに応えたいと熱くなりました。だから、練習から気を抜かず、いつも以上に声を出したりしながら、チームが落ち込まないよう気をつけました。
 星野監督は試合中にベンチで怒る、12球団でもあまりいないタイプの指揮官だと思います。最初は戸惑うことが多かった。「また怒鳴っているよ」と頭が混乱したこともあったし、他の選手もそういう捉え方でした。最近は監督の言動の本質が理解できるようになりました。引き締めるために意図的に怒っているとか、こういう状況だからあえて厳しい言葉を掛けているとか。勝利への意識を高めていたんだと思います。
 イーグルスでは星野監督以外に、2人の監督の下でプレーし、それぞれ大切なことを学びました。野村監督には捕手としてのイロハをたたき込まれました。当時書きためたノートは今でも見返すこともあります。一人の人間としてしっかり生きなければならないという人間学も教わりました。
 ブラウン監督には毎日、打撃練習に付き合ってもらいました。チームが最下位にもかかわらず、使い続けてくれて、1年間戦い抜く体力、精神力を身に付けたと思います。本当にいい環境でプレーさせてもらいました。
 イーグルスは創設9年目で初優勝することができました。それが早いか遅いかは分かりません。でも、この球団が頂点に立ったことは大きな意味があります。
 2年前、東北地方は東日本大震災に遭い、多くの掛け替えのない命を失いました。当時、被災地球団の選手会長として「見せましょう、野球の底力を」と宣言し、勝利を届けることを約束しました。
 しかし、2年連続でのBクラス。ふがいない結果にやじられることもありました。ファンの方々は「何をやっているんだ」と思って過ごしてきたはずです。このまま優勝せずに引退すれば「口だけだった」と思われてしまう。だからこそ、東北の皆さんに、優勝という結果を届けることができてホッとしています。
 ただ、これで終わりではありません。クライマックスシリーズ、日本シリーズがあります。最後も笑顔で締めくくりたい。イーグルスを今後も常勝軍団にしていきたい。それが目標です。これからも温かい声援をよろしくお願いします。

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