新型コロナウイルスの感染を防ごうと、外出自粛などで日光を浴びる機会が減ることについて、専門家が懸念を示している。日光には骨を丈夫にするビタミンDの生成に欠かせない紫外線が含まれているからだ。日本では男女ともに全世代でビタミンDが不足していると言われており、専門家は適度に日光を浴びるよう勧めている。
日光に含まれる紫外線には、A波(UVA)とB波(UVB)がある。このUVBは日焼けをもたらす一方、腸管からのカルシウムの吸収を助けるビタミンDを生成する。5月はUVBの量が多いが、ガラスを透過しにくく、窓を閉め切った室内にはほとんど入ってこない。
日光に当たらないことについて、国立環境研究所の中島英彰主席研究員(大気物理化学)は「ビタミンDが欠乏状態にある若い女性や高齢者は骨の病気が増える危険性がある。育ち盛りの子どもたちも家に閉じこもってゲームばかりしていると、ビタミンD不足が懸念される」と話す。室内で物を持ち上げた際、背骨を疲労骨折した若い女性の症例もあるという。
ビタミンDの欠乏は外見では分からない。自覚症状もないため、大阪府立大の桒原(くわばら)晶子准教授(栄養療法学)は、血液採取などをせずに状態を把握できる日本人向けの質問票を開発。日焼け止めの使用頻度や食生活など7問からなり、回答が一定の点数以上となれば欠乏の可能性が高いという。
ビタミンDを得るにはどうすればいいか。国環研は、肌への影響が少なく、ビタミンD生成に十分な照射時間の目安をウェブサイトで公開。5月なら日中約15分日光を浴びれば、1日に必要な分が作られる。中島氏は「天気の良い日にベランダや、窓を開けて窓際で過ごすほか、紫外線の弱い朝や夕方などに約30分の散歩やジョギングをするのもいい」と話す。いずれも日焼け止めを塗らない前提だが、UVBは地面にも反射するため、日陰での日光浴でもいい。日焼けの影響が少ない手のひらを出した状態で歩くのも効果的だ。
ビタミンDは食品にも含まれ、特に含有量の多いサケやイワシ、ウナギなどを食べるといいと言われる。【谷本仁美】