総務省の調べによると、医療や健康にまつわる情報を収集しようとする人の、実に75%以上がインターネットの検索サイトを使っている。が、ネットの世界は玉石混淆。なかには根拠に欠けるものや、怪しい商品の広告に誘導するためのものも少なくない。そうした怪しい情報に惑わされないためにどうしたらいいか。専門家に聞いた。
人は病気でわからないことがあったときに、インターネットの検索サイトに頼ってしまうことが多い、と島根大学医学部臨床研究センターの大野智さんは言う。
「不安な気持ちを抱えているときに、気になる症状をネットで検索し、そこに書かれていることを読んで、さらに不安を大きくしてしまうようなことがままあります」
問題なのは、「××を食べるとがんが消える」といった、医学的根拠のないものや悪質なデマが書かれたサイトだ。それらによって人は混乱し、悪い方向に導かれ、高額商品を買わされるなどの詐欺に遭ってしまうこともある、と内科医の名取宏さんも警鐘を鳴らす。
「だます側は巧妙になっています。医学レポートを引用するなどして、さも医学的に立証されているように見せたりしているので、医学知識の乏しい人が見抜くのは難しくなっています」(名取さん)
怪しい医療サイトはどこで見分けたらよいのか。
検索の仕方で得られる情報は全く異なる
ひと口に医療情報といっても、2種類に分けられる。厚生労働省や公的な研究機関が発信する「一次情報」と、それらを基にして新聞や雑誌などが発信する「二次情報」だ。
「二次情報」には個人のブログなども含まれる。仮に医師が出典を明記して綴ったものであっても、個人が一次情報をもとに発信したものは「二次情報」と呼ばれる。
それを踏まえた上で、実際に検索してみよう。まず、Yahoo!で「胃がん」で検索すると、トップには国立がん研究センターのサイトが表示される。
「2018年1月からYahoo! JAPANと国立がん研究センターが連携して、検索画面のトップに同センターの情報が表示されるようになりました。それらはエビデンス(=科学的根拠)に基づいて公表されているものですから、信頼に足ります。こうした傾向はGoogleなどでも見られるようになっています」(大野さん・以下同)
だが、検索時に組み合わせるキーワードによって、表示される内容はガラリと変わる。次に「胃がん サプリメント」と検索してみると、途端に二次情報が増えるのだ。
「がん治癒とサプリメントの関係は解明されていません。正確な根拠はありませんから、公的研究機関がそうした情報を掲載することはありません。そうすると、広告がらみの情報や個人的な見解などが一気に増えるのです」
もちろん、すべての広告が悪質だという話ではない。また、個人のブログやまとめサイトなどがすべからく信用に価しないわけではない。が、それらの中には、科学的根拠に欠ける、誤った情報が交じっていることが多いのだ。
「検索する人が不安に思っている単語をキーワードに加えることによって、二次情報ばかりが上位に表示されてしまうのです。病名だけではありません。たとえば、『左横腹が痛い原因』『腰痛が続く』などと打ち込んだ場合も同様です。
公的な研究機関のサイトは症状を表す単語で検索機能が作動するように作られていませんから、二次情報ばかりが画面の上位に上がってきてしまうのです」
二次情報は医学的根拠を参考にしているものであったとしても、個人の見解が入りやすいので、正確な情報とはいえなくなってくる。
【*本企画内で掲出しているサイト等はサンプルやイメージであって、特定の会社や商品、あるいは商品ジャンル等を貶めるものではありません】
※女性セブン2020年4月16日号