明治『ポルテ』に森永『チョコフレーク』、江崎グリコ『キスミント』。昨今、少子化や嗜好の変化による“売上の低下”から、ロングセラー菓子の生産終了が相次いでいる。そんな中、終売から一転、独自の戦略で売上増を達成した商品がある。かつて明治から発売されていた『サイコロキャラメル』だ。
【貴重写真】明治サイコロキャラメルほか、カールにチェルシーも!懐かしCMずら~り
■全国区の定番商品から地域限定の土産品へ
2016年3月に生産が終了した『明治サイコロキャラメル』は、現在、明治のグループ会社「道南食品」から道内限定菓子『北海道サイコロキャラメル』として再発売されている。復活は2016年6月。生産終了からわずか3ヶ月でリニューアル発売となり、今月、3年半目をむかえた。
「国内のキャラメル市場が縮小するなか、発売以来90年間親しまれてきたサイコロキャラメルは、明治としては販売を終了しました。しかし、サイコロキャラメルを製造していた弊社としては、ファンの方々に向けて、なんらかの形で商品をご提供したいとの思いがありました。昭和10年からキャラメルを製造し、その中でもサイコロキャラメルは長きにわたり会社を支えてくれた商品でした。そうした歴史がある中で、サイコロキャラメルの製造・販売に関するライセンスを取得し、“北海道をふりだしに”をコンセプトに、お土産菓子の『北海道サイコロキャラメル』として、リニューアル発売することにしたんです」
サイコロキャラメル復活の背景をこう話すのは、道南食品でマーケティングを担当する藤原拓さんだ。製造・販売のライセンスを取得した同社は、その後、販路の選択と集中を実施する。
「弊社の商品は、駅や空港などの土産店を中心にお取り扱いいただいていますので、北海道のお土産として販売することにいたしました」(道南食品マーケティング担当・藤原拓さん/以下同)
こうして“全国区の定番商品から地域限定の土産品”へと姿を変えたサイコロキャラメルは、2018年度には前年比で約2.8倍の伸長をみせ、順調に販売数を伸ばしているという。もちろん、その裏には「販路戦略以外の起業努力もあった」と、藤原さん。
■従来のファンを置いていかない“マイナーチェンジ”という選択
「ミルクの原料(練乳)と砂糖を北海道産に変更し、酪農が盛んな北海道らしくミルクのおいしさにこだわりました。またパッケージも、『北海道サイコロキャラメル』にネーミングも変更し、明治のロゴが入っていたサイコロの1の目部分には、北海道マークをいれています」
北海道の特徴や魅力を生かしながら、発売以来親しまれてきた味わいとブランドイメージは変えないことで、若者から高齢者まで幅広い世代の北海道観光客を取り込むことができた。
「1927年に発売されたサイコロキャラメルは、40代から高齢者までの認知度が高い。ブランドイメージはそのままに、北海道の魅力を加えたことが、かつてのサイコロキャラメルになじみのある世代にも受け入れてもらえたんだと思います」
また同時に、ラインナップの拡充による新規顧客獲得にも努めてきた。富良野メロン果汁パウダーを使った『富良野メロンサイコロキャラメル』、北海道の市町村名をパッケージにした『北海道179市町村サイコロキャラメ』、さらに今夏は、JR北海道の駅名標410駅をパッケージにした、『JR北海道駅名標キャラメル』を発売している。
「駅名コラボの『JR北海道駅名標キャラメル』は、夏休み時期だったこともあり、テレビや新聞、インターネット、SNS等でも多く取り上げていただきました」
復活から3年半、多くのファンに惜しまれながら終売となったサイコロキャラメルは、今、新たなフィールドで確かな地位を築きつつある。最後に、大手さえも手放した「縮小市場」に対する今度の見通しをうかがうと、「展望は明るい」と藤原さん。
「確かに、日常的のお菓子としてのキャラメル市場は縮小方向です。背景には、少子高齢化のほかにも、清涼菓子やグミ市場が伸びていることが考えられます。しかし、土産市場としてのキャラメル市場は拡大していると認識しています。最近では、海外旅行者の需要も増えてきていますし、また、今後は昔懐かしいお菓子=キャラメルとして、年配者の需要もさらに増えていくものと考えています」
赤と白のパッケージでおなじみ、あのサイコロキャラメルから、ロングセラー菓子の新たな生き残り戦略のヒントが見えてきた。