東日本大震災から12年を迎えるのを前に、渡辺博道復興相が報道各社のインタビューに答えた。震災復興が政府の最重要課題との認識を強調し、東京電力福島第1原発事故の被災地への帰還促進や震災の風化防止に取り組む考えを示した。
-今国会の岸田文雄首相の施政方針演説に「東日本大震災」の文言はなかった。
「震災復興が政府の最重要課題であることは間違いない。地震・津波被災地域は心のケアや水産加工業の売り上げ回復の課題が残る。私の原点は現場主義なので、被災地に寄り添いながら復興を成し遂げたい」
-防衛費増額の財源として政府は復興特別所得税の一部転用を公表した。復興財源の確保に懸念が残る。
「防衛力の強化は復興財源の総額を確保することが大前提だ。復興特別所得税の転用ではないことは申し上げたい。被災地への丁寧な説明に万全を期す。財源が決まっている第2期復興・創生期間(2021~25年度)以降の事業規模や予算は白紙の状況だ。第2期の進捗(しんちょく)を注視したい」
-原発事故被災地では避難指示解除後も、元の場所に戻る住民が少ない。どのように帰還を促すか。
「住民意向調査で帰還の条件を尋ねたところ、医療や介護、福祉施設の再開・新設を挙げる声が多かった。福島県双葉町は特定復興再生拠点区域内のJR双葉駅西側に診療所を開設した。必要な環境整備を引き続き支援していきたい」
-前任の秋葉賢也氏(衆院比例東北)は復興広報に力を入れた。大臣として独自色をどう出すか。
「風化防止に尽力したい。日本は災害大国だ。復興庁が12年間の事業を検証し、教訓を生かす。多くの人に被災地の伝承施設や震災遺構に足を運んでもらうことも重要だ。陸前高田市と宮城県南三陸町の伝承施設を視察したが、津波の恐ろしさや復興する街の姿を実感することができた」