常磐線 9年ぶり全線開通 鉄路再び人結ぶ

JR東日本は14日、東京電力福島第1原発事故の影響で不通となっていた福島県内の常磐線富岡(富岡町)-浪江(浪江町)間20.8キロの運転を再開した。常磐線は約9年ぶりに同県沿岸部も含めて全線がつながり、東日本大震災と原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の鉄道の不通区間が全て解消された。

 最後の不通区間20.8キロのうち13.6キロ部分は放射線量の高い帰還困難区域にあったが、全線再開に合わせ今月、夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉(双葉町)の3駅と周辺の避難指示が解除された。JR東は復旧工事とともに除染を実施。夜ノ森、双葉両駅は橋上化するなど新駅舎で営業を再開し、大野駅は内外装を改修した。
 東京都内と仙台を直通で結ぶ特急も、3往復で運行を再開。震災前の4両編成中心から10両編成となり、大野、双葉両駅にも停車する。双葉駅では14日午前、内堀雅雄福島県知事や赤羽一嘉国土交通相、伊沢史朗双葉町長ら関係者が上野発の特急一番列車ひたち3号を出迎えた。
 JR東の深沢祐二社長は出迎え式であいさつし「(震災で被災した)JR東の線路が9年ぶりに全てつながった記念すべき日。鉄道やさまざまな生活サービス、観光を通して福島の地が復興し、発展するよう汗をかきたい」と述べた。
 ひたち3号は午後0時40分ごろ、定刻を10分ほど遅れて仙台駅に到着。大勢の乗客が降り立ち、車体を写真に収めるなどして全線再開の喜びをかみしめた。
 土浦駅から乗車した茨城県土浦市の会社員富島幸弘さん(58)は「駅ごとに『お帰りなさい』と言葉を掛けてもらい、沿線の方々もこの日を待っていたんだろうと感じた」と話した。
 震災前も特急に乗ったことがあるといい「富岡-浪江の田んぼだった辺りは草が生い茂っていた。田んぼに戻せないのはかわいそうだ」と原発事故の影響に思いをはせた。

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