平均年収433万円時代でもタワマン建設ラッシュ…いったい誰が買っているのか?

東京五輪・パラリンピックの選手村として使われ、現在、改修が進んでいる大型マンション「晴海フラッグ」。その約1.5キロ圏内に、たった5年間で9棟ものタワーマンションが建設されるという。 【写真】「ペット禁止」マンションを買った「動物アレルギーの男」に起きたヤバい悲劇  平均年収「433万円」の時代に、誰がタワマンを買っているのか? マンショントレンド評論家で、著書『60歳からのマンション学』がある日下部理絵氏が、その購入者を4タイプに分けて解説する。

日本はすでに「タワマンだらけ」

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 タワーマンションというと美しい夜景に豪華なエントランス、ジムやゲストルームなどの充実した共用施設があり、「成功者の証」というイメージが強いのではないか。それゆえ資産価値やステイタスとともに、妬みの対象になりやすく、こと話題に欠かせない。  基本的なことをおさらいすると、タワマンとは一般的に20階以上、高さ60m以上の住居用の超高層建築物のことをいう。  ここ10年~20年ほどの建築物かと思いがちだが、歴史は意外にも古く、日本で初めてタワマンが建設されてから、既に45年以上も経っているのだ。日本初のタワマンは1976年、高さ66m、地上21階建ての「与野ハウス」(埼玉県さいたま市)である。  また、タワマンというとステイタス以外にも、「希少性」も魅力とされるが、既に全国38都道府県に1400棟以上もあるのをご存じだろうか。  東京カンテイによると、全国のタワーマンションストック総数(2021年12月末時点)は1427棟、37万5152戸と公表されている。  このうち首都圏だけで760棟・23万2477戸と棟数・戸数ともに全国の過半数を占めている。そして東京都だけで485棟・14万6300戸で全国シェアの32.1%にも相当するのである。次いで大阪府255棟・6万3951戸、神奈川県139棟・4万2672戸と続く。  この1427棟というのは、ざっくり計算するとマンションストックの1.3%に相当する(2021年末時点のマンションストック総数、約685.9万戸を平均戸数61戸で独自計算)。  全国の分譲マンションの100棟に1棟以上が既にタワマンなのだ。多いと考えるか少ないと考えるかはあなた次第であろう。  ただし、筆者の見解としては、タワマン建設ができる立地は限られることから、大規模再開発を除いては、建設できる立地は既にタワマンだらけであり、それらエリアでの「ヒエラルキー」や「勝ち組」「負け組」が生じているように感じる。  続いてタワマンなど新築マンションの価格についても見ていきたい。  不動産経済研究所によると、2021年度の首都圏新築マンションの1戸あたりの平均価格は6360万円、東京23区にいたっては8449万円だという。  総務省統計局発表の家計調査によると、日本人の平均年収433万円、男性平均532万円、女性293万円とされる。次にタワマンの30%以上がある東京都の平均年収を見ると437万円、大阪府で392万円、神奈川県403万円である。  平均価格の上昇に対して、上がらない平均年収。一体誰が高額なタワマンを買っているのか、疑問ではないだろうか。

タワマン購入層は「4タイプ」

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 ここで国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査」から、実際に持ち家を購入した世帯の世帯年収、賃貸住宅に居住している世帯の世帯年収の居住形態別の平均値データもご紹介したい。  ・持ち家(注文住宅)……738万円  ・持ち家(分譲戸建て)……688万円  ・持ち家(分譲マンション)……798万円  ・賃貸(戸建て)……584万円  ・賃貸(マンション・アパート)……478万円  見てのとおり5つの居住形態のうち、最も平均世帯年収が高いのは、分譲マンションに居住する世帯である。  賃貸マンション・アパートの居住者は、単身世帯も多く平均値が低くなるのはいたし方ないとはいえ、マンションを所有できる(できた)世帯年収が約800万円というのは驚きしかない。まさに実需としての購入層データといえるであろう。  しかし、ここまで来ても東京23区のタワマンを買うには、相当な貯金がある方を除いては、いまだ年収不足といえる。ではいまどんな人がタワマンなどの高額マンションを購入しているのか。4つのタイプにわけて説明したい。  (1) 超パワーカップル  いわゆる実需層。特に都心部の新築マンションを買える層は、俗に言われる超パワーカップルである。これまでの世帯年収1000万円程度のパワーカップルでは買えないレベルになっているため、今は夫婦ともに上場企業に勤めるような、世帯年収1500万円とか2000万円の超パワーカップルが実需で購入している。  (2) 国内外の投資家  転売業者を含めた国内外の投資家。日本では転売規制がないタワマンも多く、転売目的で購入されている。まとめて買って、何年後かに転売するのだ。円安水準もあり、転売規制のないタワマンなどはより加速するのではないか。  (3) 高齢者の節税対策  我が国は5人に1人以上が70歳以上であり、高齢者の貯金平均は2386万円といわれる。あくまで平均値であるが、注目したいのは貯金があると回答した人の10.8%が3000万円以上という回答だ。  このように高齢の富裕層が増えており、銀行に預けるよりはと不動産投資をしたり、相続対策で立地の良いタワマンを節税目的で買う人が増えている。ひと昔前は相続対策というとアパート経営だったのが、最近は「タワマン節税」狙いなのだ。  ※タワマン節税とは、高層マンションの時価と評価額の差額を利用した節税。10年ほど前に一世を風靡し、その後の税制改革で高層階であればあるほど固定資産税率が上がるようにはなったものの、それでも節税効果があるため、高齢の富裕層が節税を目的に買う。都内のタワマンでは、大きな顧客層とされる。  (4) 地方の富裕層  最後に(3)ともかぶるが、地方の富裕層である。東京に資産が欲しいと思ったとき、東京23区のマンションは相当高くなっている。そこでオリパラの選手村であった「晴海フラッグ」などは、東京都中央区のアドレスでありながら、ある程度まとまった物件を手に入れることができる。そういう意味で地方の富裕層も、相当関心を持っているのだ。  デベロッパーも商売である以上、建設し売れる見込みがなければ計画しない。このような現状を踏まえ、東京都中央区アドレスのタワマンはまだまだ富裕層などを中心に売れると見込んでいるワケだ。  そんなタワマンの建設ラッシュはまだ終わらない。「晴海フラッグ」をはじめとした約1.5キロ圏内にたった5年間に9棟も建設されるという。  詳しくは後編記事〈湾岸エリア1.5キロ圏内にタワマンが「5年で9棟」建設の異常事態…ブーム終焉のカウントダウンか? 〉説明しよう。

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