平均貯蓄1658万円は「回答率0.02%」の調査で算出した代物だった!

■2人以上世帯約3000万のうち、サンプル数はたった6363世帯
新聞を読んでいると、定期的に「家計調査」に関する記事が出てくる。ご存じの通り総務省が毎年行っているもので、毎年のように「1世帯あたりの平均貯蓄額は……」というタイトルが立つ。
「6363」
いきなり意味不明な数字を載せた。この数字は何だと想像するだろうか。実はこれ、「家計調査」のサンプル数である。総務省のサイトには2012年の家計調査結果が載っていて、その中に貯蓄に関するデータがあるのだが、「サンプル数(2人以上の世帯の集計世帯数)」がこの6363だったのだ。
著者は、データを見ながら気になった。
この「2人以上の世帯の集計世帯数」の単位は何だろうか? 「1千件」だろうか? 表に単位がなかったので、総務省の担当部署に電話を入れてみた。
「あのー、集計世帯数が載っていますが、これは単位は何ですか? 1千件ですか?」
それに対して総務省の女性担当者は「いいえ、件です」と答えた。
とまどった著者は思わず叫んだ。
「エッ、単位が件だということは、サンプル数が6363件しかないということですか? そんなに少ないの?」
すると、総務省の女性担当者は言い訳めいたことを言う。
「実は家計調査のサンプルは少ないのです。なにぶん調査にご協力頂けない場合もございますので……」
著者は、これには心底驚いた。
新聞紙上を賑わす家計調査とはこんなものだったのかと。日本には、どれだけの世帯があるのか知らないが、人口が1億2000万人なのだから数千万件はあるはずだ(編集部注:国立社会保障・人口問題研究所によれば、2010年時点で2人以上の核家族世帯総数は約3000万世帯)。その中の「6363件」なのである。つまり、家計調査は実際の0.02%の世帯に聞いて、その数字(結果)があたかも全体を表しているようにまとめられたもの、ということになる。
■主な回答者は「収入や貯蓄が多い人」
総務省はこの調査対象をどのように選んだのだろうか? 
サイトには色々な解説が載っているが、意味がわからない。そこで友人や知人に訊いてみた。「あなたは総務省の家計調査に協力してアンケートに答えたことがあるか?」と。すると、誰もがNOだと答えた。中には「国勢調査なら答えたけど、家計調査なんて聞いたこともない」という返事さえあった。
家計調査というものは、そもそも何を調べるのだろうか?
調査票はネットで「家計調査 調査票」と検索すればその情報が出てきた。その内容は膨大な質問の山だった。
「電気料金は? 都市ガス料金は? プロパンガス料金は? 現金の収入は? 収入の種類は? 現金の支出は? 支出の品目は? クレジットカードによる買い物は?」
まあ、微に入り細に入る内容で、書き込もうと思ったら、よほどの時間を覚悟する必要がある。
ここで素朴な疑問が沸く。こんな調査票が送られてきても、協力する人がどれだけいるだろうか?
多くの人は面倒臭がることだろう。プライバシーの侵害だという不満も出かねない。筆者が推測するに、この調査に協力する人は収入や貯蓄に自信のある人が中心になってしまうのではなかろうか。また、収入に自信のない人は辞退してしまうことが多いのではないか。
統計学上は6363件というサンプル数でも調査が成立するということかもしれないが、あまりに大ざっぱだ。このように少ないサンプル数のデータで、果たして「日本の現実」がわかるのだろうか。

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