平成後期の政治振り返る 民主党政権の功罪、歪んだ安倍一強

平成の政治を10年刻みで見ていくと、それぞれのディケイド(10年間)に大きな特徴がある。平成21年(2009年)~平成30年(2018年)で存在感が際立っていた政治家の功罪を辿る。

◆「国民を失望させた」民主党の3首相

 2009年9月、鳩山内閣が発足した。民主党は前年の陸山会事件で小沢一郎氏が代表を退くものの、総選挙では“小沢ガールズ”など大量の新人を当選させて衆院308議席を獲得。政権交代が実現し、鳩山由紀夫氏が首班指名された。

 旧民主党の事務局長を務めた政治アナリスト・伊藤惇夫氏はこう評する。

「民主党政権に対する国民の期待を砕いた。本人の言動はすべて善意から出ているが、だからこそ問題。彼は“善意の暴走者”」

「首相にしてはいけなかった人であり、その幼稚さは最大の罪であった」(筆坂秀世・元共産党参院議員)

 民主党2代目首相の菅直人氏は、東日本大震災と福島第一原発事故に直面すると、自ら東京電力本社に乗り込んで現場を混乱させる愚を犯した。

「菅氏にとって権力とは自己満足の道具、自尊心を満たすオモチャだった。そうした政治力不足が、原発事故の被害拡大をもたらしたといえる」(ジャーナリスト・安積明子氏)

 原発事故では枝野幸男・官房長官が「『健康に直ちに影響はない』と繰り返して国民の命より自分の立場を守った」(政治ジャーナリスト・藤本順一氏)と連帯責任を指摘された。

 その菅氏以上に厳しい評価となったのは、民主党3代目の野田佳彦首相だ。

「公約になかった消費税増税に固執し、消費税原理主義者となって民主党を分裂させることに“成功”した。党首討論で突然の解散を表明した戦略のなさも脱帽もの」(国際ジャーナリスト・小西克哉氏)

「総理になるべきではなかった」政治家を3代続けて総理に据えてしまったのが民主党の失敗であり、国民の二大政党制への失望を招いたといえる。

◆安倍首相より高評価の菅官房長官

 民主党の自滅で政権に返り咲いた安倍晋三首相は首相在任7年を超え、憲政史上最長の長期政権が視野に入ってきた。

「憲法改正など日本政治の課題に挑戦することを通じて、国民に政治のあり方を考える契機を与えた」(岩井奉信・日本大学教授)

「日本を外交面で『世界の大国』にもっていった功績は大きい」(政治評論家・屋山太郎氏)

 そう実績を評価する声は多い一方、政治手法に対しては厳しい評価も多かった。

「政治家に不可欠なのは国会論戦を通じて国民に政策を訴える言語能力。安倍首相は野党質問にヒステリックに反応し、論理的に答える能力が決定的に欠けている。結果、国会で与野党がヤジを飛ばし合う幼稚な議会政治をもたらした」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)

「すぐバレるようなウソをつき、それが罷り通る今の日本をつくった。森友・加計問題がその典型」(福岡政行・白鴎大学名誉教授)

 経済ジャーナリスト・荻原博子氏は、「安倍一強」体制による忖度行政が「(役人や政治家の)国会で平気でウソをついていいという行為を恒常化させた」と、官僚のモラル低下を憂いた。

 対照的に高い評価を受けたのが、安倍首相の“女房役”、菅義偉・官房長官である。

「政権の『大黒柱』兼『火消し役』。菅氏の存在なくして安倍政権はない」(ジャーナリスト・長谷川幸洋氏)

「内閣人事局を活用して官邸主導体制を確立した」(政治アナリスト・渡瀬裕哉氏)

◆次の時代を担う政治家の「役割」とは

 平成政治の掉尾に、都知事選の小池旋風から一転、希望の党旗揚げで失速した小池百合子・都知事は「ポピュリスト」との評を多く集めた。日本新党の先輩でもある江田五月・元参院議長は「無責任な言動で野党を手玉に取り、最終的にこれを崩壊させた」と語った。

 ジャーナリストの田中良紹氏が平成の政治をこう総括する。

「日本が経済面で米国を追い抜くところまで来たのが昭和なら、冷戦が終わった平成は米国に逆襲され、日本が米国隷属化をより強めた時代だった。しかし、トランプ大統領の登場は米国の一国支配が終わりを告げ、平成の次の時代は世界のパラダイム・チェンジを予感させる」

 新しい時代には、どんな政治家が登場し、日本の政治を成熟させることができるのか。

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