年収の壁引き上げ、知事会で不安の声相次ぐ 「住民サービス低下」「財源措置が必要」

全国知事会議が25日、東京・都道府県会館であり、年収103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」引き上げを巡り、東北の各知事から税収減への不安が噴出した。国から知事会に「工作」があったとの指摘については「国の支配下にはない」と各知事が強く否定した。

村井知事、国の「工作」説に不快感

 「基本的には賛成。ただし、地方に負担をかけないということを国に要望し実現しなければ」

 宮下宗一郎青森県知事は、所得税の非課税枠を178万円に引き上げる国民民主党の主張に関し、県民の負担軽減の視点から理解を示しつつ、くぎを刺した。

 東北各県は、178万円への引き上げで税収が打撃を受けると懸念。県と市町村を合わせた減収幅について岩手は約700億円、宮城は約810億円、秋田は約250億円、山形は約300億円と試算する。

 青森と福島は試算を非公表だが「前提が不明確なため、議論の動向を注視している」(福島県税務課)と神経をとがらせる。

 吉村美栄子山形県知事は取材に「(年収の壁は)なくす方が望ましいが、住民サービス低下への指摘もある」と懸念。内堀雅雄福島県知事も「大きな減収になるのは自明。地方に恒久的な財源措置が必要になる」と警鐘を鳴らす。

 会議では、東北以外の知事たちからも「地方の負担がない真水(国の直接支出)による穴埋めが必須」「引き上げが恒久措置なら穴埋めも恒久的であるべきだ」との声が相次いだ。

 地方側の反発に対し、国民民主は「総務省が知事会に、引き上げについて反対表明するよう工作した」との説を広めている。

 青森の宮下知事は「国の指示で何かを決めることはない」と強調。知事会長を務める村井嘉浩宮城県知事は「知事会が国のコントロール下に置かれているような誤解に、憤りを感じる」と語気を強めた。

 会議後、村井知事は「(年収の壁引き上げは)国民の負担が軽くなり人手不足解消にも寄与する一方、国からの穴埋めが欠かせない」と強調し「総務省からの不当な話がないことも、事実関係として主張していく」との認識を示した。

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