「ギリギリ逃げ切れるはず!」。そんな楽観的な見方をしがちな50代だが、少し目を凝らせば、すぐそこは阿鼻叫喚の地獄絵図。30代で年収600万円オーバーするも、順風満帆な人生から一転して負け組への転落。それは明日の我が身なのだ。彼らに一体何が起こったのか? その一部始終を明らかにする!
◆逃げ切り世代と呼ばれる50代は、なぜ負け組に転落していったのか?
今の50代は年功序列・終身雇用に守られた最後の世代として、“逃げ切り世代”とも呼ばれる。だが、昨年、『転落する50代の共通点』で特集したように、うまく逃げ切れず負け組に転落する中年たちが続出している。下記のアンケートは、そんな「負け組50代」の生の声だ。
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【負け組50代の実情】年収が400万円以下に激減した50代男性・200人が回答
<転落の時期はいつ頃でしたか?>
30~34歳 22人
35~39歳 38人
40~44歳 72人
45~49歳 68人
<転落の直接の原因はどれに該当しますか?(複数回答可)>
・上司や部下との人間関係 98人
・無謀な転職や独立・起業 66人
・業務上の過失や失敗 48人
<その背景にあった要因はどれに該当しますか?(複数回答可)>
・無責任な上司や上層部への不満がたまり、職場に嫌気が差してしまった 80人
・仕事に行き詰まり、何か新しいことにチャレンジしたくなった 38人
・中間管理職の激務とプレッシャーにつぶされた、もしくは逃避したかった 32人
・自分は過少評価されていると感じ、外に出て勝負したくなった 32人
・出世コースから外れ、自分の先が見えて自暴自棄になってしまった 24人
・無能な上司や上層部の言いなりになってしまった 24人
・家庭がうまくいかず、仕事にも身が入らなくなった 18人
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アンケートからもわかる通り、彼らの転落の7割は40代で訪れている。一般的に40代は働き盛りで、キャリアも可視化され安定期に入っていくと思われがちだが、むしろ、そこにこそ“転落の罠”が仕掛けられているのだ。そのトリガーの最たるものが「上司や部下との人間関係」で、約半数が当てはまる。人間関係のリスクについて、人材育成コンサルティング企業を営む前川孝雄氏はこう解説する。
「かつての家族型終身雇用が機能した組織では、社員が同じ価値観を共有できていましたが、今は価値観断絶の時代。『働き方改革』や『ダイバーシティ(多様性)』と聞こえはいいですが、裏を返せば『組織の論理』と『個人の論理』が錯綜し、衝突が起きやすい環境とも言えます。
出世も年功序列とはいかず、数少ないポストの争奪戦。かといって保身しか頭にない上司に『チャレンジしろ』と言われても、いつはしごを外されるかわからない。現場の社員には不安や不満が蓄積していきます」
◆高年齢者雇用安定法が40~50代を追い詰める
その過酷な現実を人事ジャーナリストの溝上憲文氏はこう語る。
「40~50代の立場をさらに悲惨にしたのが、’13年に改正された高年齢者雇用安定法です。これにより60歳以降の解雇が難しくなり、使えない“ゾンビ社員”が大量に発生。その上、企業の目はすでに20代・30代に向いており、割を食うのは40~50代ばかり。
現在の転職エージェントバブルは、彼らの不満がいかに職場に渦巻いているかの証しです。東京オリンピック後は景気が悪化し、『人間関係は最悪で出世の見込みもない』という真の修羅場が訪れるでしょう」
◆ロスジェネ中年には、チャンスも逃げ場もない
そこでたまらず無謀な転職や独立をすると、それこそ転落のきっかけになるのはアンケートの通り。
「転職でキャリアアップできる40OVERは2割未満。飛び出すにしても、会社のリソースを最大限に活用し、スキルや人脈を確保してからでないと厳しい」(溝上氏)
さらに前川氏はこう続ける。
「労働市場で40代に求められるのはマネジメント能力。しかし、今の40代は上が詰まってポストが空かず、マネジメントを学ぶ機会すら奪われている状態です。武器を持たずに漠然と転職・独立しても玉砕するだけです」
両者とも「今の50代が40代だった10年前と比べて労働環境ははるかに厳しい」と口を揃える。つまり、転落リスクには拍車がかかっているということだ。 <取材・文/週刊SPA!編集部 アンケート/エコンテ>