不安のない老後生活に備えるために
自営業などの、受給が国民年金だけの人の場合、厚生年金という上積みがある会社員よりも老後に受け取れる年金は少なく、不安があるかもしれません。
年金を増やす方法には、付加年金や国民年金基金に加入する方法がありますし、確定拠出年金や経営者の退職金としての小規模企業共済も検討に値します。年金代わりになるだけでなく、掛け金全額が所得控除となり、所得税と住民税の節税になるといったメリットもあります。
ただし、ある程度の収入がなければ掛け金そのものを捻出できず、収入が低いとそのような対策には限界があります。
貯金も持ち家もない、親の家もない、収入が上がる見込みもない、あるいは子どもの家に転がり込みたくても、子どもも家がなく貧しいという場合、どうすればいいのでしょうか。
定年後も老後貧乏への対策は可能!
まず考えられる対策としては、健康に留意し、定年後もなるべく長くアルバイトなどで生計を立て、年金の繰り下げ受給をすることです。
繰り下げれば繰り下げるだけ受給額が多くなり、長生きすることによる老後の金銭的リスクを低減することができます。たとえば70歳から受給すれば、なんと受け取れる年金額は4割もアップします。
また、UターンやIターンによって田舎暮らしをする、いわゆるプチ移住も対策として挙げられます。特に、過疎化など人口減少に悩む地方自治体の中には、住居や仕事の斡旋、あるいは家賃補助など、手厚い待遇を用意しているところもあります。
そうした田舎では生活コストは非常に低く、さらに近隣住民で農作物を融通しあう習慣があるなど、国民年金+アルバイトで最低限なんとかやっていくことは可能です(娯楽が少ないとかそんな贅沢を言っている場合ではないですし……)。
ただし、仕事そのものは少なく、事務職など内勤の仕事はほぼ皆無のことが多く、メインは農業など体を動かす仕事になるかもしれません。
しかし、土いじりもやってみると案外楽しいもので、もくもくと作業して汗を流し、実った作物を収穫するというのは、都会に疲れた人には新鮮のようです。
また、タイやフィリピンといった物価の安い新興国に移住している人もいらっしゃいます。私がしばらく滞在したフィリピンのセブでは、床屋のカットが200円でしたし、ジプニという乗り合いバスは1回10円から30円くらいで乗れるなど破格の安さです(※執筆時点の物価になります)。
言葉の問題や習慣の違いを気にする人もいますが、「住めば都」とはよく言ったもので、なんとかなるものです。特に東南アジアではどこも親日国なので、日本人には住みやすいといえます。
田舎にしろ新興国にしろ、多くの人が直面するのが近隣の人間関係かもしれません。価値観や生活習慣も違い、慣れないことに困惑するかもしれません。
そこで大切なのは、小さなことでいちいち目くじらを立てない、大らかな心を持つことです。
日本ではあちこちで炎上や言葉狩りが行われているなど、大したことがないことでもカリカリする人は多いですが、「いろんな人がいて、いろんな価値観があるもんだ」と受け入れれば、周囲との関係で悩むこともありません。
そして、そんな大らかな発想を持てば、お金がなくてもそれを不満に思わず、日常の中で小さな幸せを感じられる豊かな老後を送れるでしょう。
文:午堂 登紀雄(米国公認会計士)
大学卒業後、会計事務所などを経て、米国コンサルティングファームで経営コンサルタントとして経営戦略立案や企業変革に従事。貯金70万円を1年で3億円の資産に成長させた経験をもとに、お金持ちになる方法や考え方を伝授。