年金だけで生活している高齢者世帯が24%に急減!何が起きているか?

「年金のみで生活する高齢者世帯が急減している」――。数年前の「年金2000万円問題」を持ち出すまでもなく、年金のみでは生活費が足りない衝撃的な事実が明らかになりました。しかも「年金だけで生活する高齢者世帯」がここ数年で急減しているといいます。いったい何が起きているのでしょうか。 【画像】年金だけで生活している高齢者世帯は何%?

年金だけで生活している高齢者世帯が激減

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年金のみで生活している世帯(2021年調査) 厚生労働省「2021年国民生活基礎調査の概況」

老後生活の基礎となるは年金です。原則として65歳になると老齢年金を受給できるようになります。 ▶国民年金 月額6万4816円(1人) ▶厚生年金 月額21万9593円(夫婦2人) 国民年金でもらえる金額は満額で月額6万4816円(2022年度)。※保険料を納めた期間が20歳から60歳までの全期間(40年)。 厚生年金に加入している場合のモデル年金は夫婦2人で月額21万9593円。※平均的な収入(平均標準報酬月額換算43.9万円)で40年間就業した場合に受け取れる年金夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額。 厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」から、年金を受給する高齢者世帯の総所得のうち年金が占める割合の世帯数をグラフで見てみましょう。 ・100%の世帯:24.9% ・80~100%未満の世帯:33.3% ・60~80%未満の世帯:15.9% ・40~60%未満の世帯:14.0% ・20~40%未満の世帯:8.4% ・20%未満の世帯:3.6% 全体の25%、約4分の1の世帯しか老後生活を年金のみで生活することができていない現実が明らかになりました。 コロナ前の2019年調査も振り返りましょう。 ・100%の世帯:48.4% ・80~100%未満の世帯:12.5% ・60~80%未満の世帯:14.5% ・40~60%未満の世帯:12.7% ・20~40%未満の世帯:8.1% ・20%未満の世帯:3.9% 全体の48%、約半数が年金だけで生活することができています。わずか2年で、年金だけで生活する高齢者世帯は一気に半減したことになります。 大きく変化しているのは「100%の世帯」と「80~100%未満の世帯」です。「100%の世帯」が23.5%減り、「80~100%未満の世帯」が20.8%増加しています。 厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」では、生活にゆとりがあるか、苦しいかの生活意識の状況も調査しています。この質問に「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した高齢者世帯は過半数を超えています。 【2019年調査】 ・大変苦しい…19.7% ・やや苦しい…31.9% (合計51.7%) 【2021年調査】 ・大変苦しい…21.3% ・やや苦しい…29.1% (合計50.4%) この2年間で年金だけで生活できる世帯は半減したとはいえ、生活が苦しいと感じている高齢者世帯は以前から半数以上が感じていたことがわかります。物価高が家計を直撃している今年は、これとはまた違った結果が出てくることが予想されます。

もはや年金だけで生活するのは難しい

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65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支(2021年) 総務省「家計調査報告」

総務省「家計調査報告」から高齢夫婦の家計を見てみましょう。2021年のデータによると、実収入から非消費支出(税・社会保険料等)を差し引いた可処分所得20万5911円に対して、消費支出(生活費)は22万4436円で、毎月1万8525円のマイナスです。 また、65歳以上の単身無職世帯の家計をみると、可処分所得約12万3074円に対して、消費支出は13万2476円で、9402円のマイナスです。 夫婦高齢者無職世帯の生活費の内訳を見てみましょう。 食費が29.3%ともっとも多く、支出全体の4分の1以上を占めています。ちなみに、食料費は外食を含みます。保険医療費や教養娯楽費、交際費を含むその他の商品支出は勤労世帯よりも割合が高くなっています。「食料費」と「その他の消費支出」で支出全体のほぼ半分を占めています。 以前、「老後2000万円問題」が話題になりました。老後資金が2000万円足りないというのは、総務省統計局の「家計調査報告」から導き出された数字です。高齢夫婦無職世帯の家計収支の2017年でのデータによると、収入は20万9198円、可処分所得は18万958円、消費支出は23万5477円です。毎月の不足分は5万4519円。この不足部分を30年間埋めるために必要なお金が約2000万円なのです(毎月の不足分5万4519円×12カ月×30年=1962万6840円)。 この数字が、老後2000万円不足するという根拠になっています。ただし、この2000万円は「家計調査報告」の平均数字です。また持ち家の夫婦のデータなので、賃貸の夫婦には当てはまりません。 さらにコロナ禍の2020年の「家計調査報告」のデータによると、収入は25万5660円で、可処分所得は22万5501円、消費支出は22万4390円です。毎月の不足分は…、いえ1111円の黒字です。年間1万3332円貯蓄できるまで、家計が改善されました。 「老後2000万円問題」が話題になると、年を追うごとに家計の収支改善が進んできたのは事実です。 ただ、この2020年の数字には明らかに特殊事情があると考えるべきです。2020年は新型コロナウイルス感染症による影響で、消費支出が減る一方で、特別定額給付金による収入が増えたことが黒字転換の要因と考えるべきでしょう。 実際に2021年は再び高齢者世帯の家計は赤字に転落して、1万8525円の不足が生じています。これを30年分を計算すると、666万9000円の老後資金が必要になります。2000万円の赤字より改善はしていますが、老後資金なしには生活できない実態が明らかになっています。 GGO編集部

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