野田政権による国民の負担増の動きが止まらない。年金の支給年齢引き上げや保険料値上げにとどまらず、医療や介護でも国民に痛みを強いるメニューがずらり並ぶ。民主党の反発でいったんは見送った案も続々と復活している。これに加え野田佳彦首相は復興増税や消費税増税をもくろむが、負担増に見合うだけの明るい将来像は示せていない。(赤地真志帆)
年金支給開始年齢の68歳への引き上げ案の唐突な提示は国民を驚かせ、怒らせたが、これは負担増計画の一部にすぎない。
国民生活に密着する医療では、病気で病院を訪れるたびに窓口で100円の追加負担をとられる「受診時定額負担制度」の導入が「社会保障と税の一体改革」に絡み検討される。
受診時定額負担は初診や再診で病院を訪れるすべての患者が負担する。ターゲットは平均月4回は通院する高齢者。通院を控えさせ医療費を抑制しようという算段だが、日本医師会は「風邪などをこじらせ逆に医療費が増えるケースもある」と反対している。
厚生労働省は、保険財政安定のため70~74歳の医療費窓口負担を現行の1割から2割に引き上げる案も出した。これは6月に一体改革案をとりまとめた時に民主党の反対で潰れた案だ。実現すれば0・2兆円の税金を浮かせることができるが、民主党が認めれば「政策や主張に一貫性がないことを自ら認めるに等しい」(自民党閣僚経験者)。
さらに厚労省は介護分野の改革案で、先月31日の社会保障審議会介護保険部会に、年収320万円以上の高齢者の自己負担を1割から2割に引き上げるなどの案を示した。これも昨年末の介護保険法の改正論議の際、民主党の反対で見送った内容の焼き直しだ。
個別メニューを見ても、低所得の施設利用者への食費・居住費補助のカット▽生活援助など軽度者の自己負担割合の2割への引き上げ▽相部屋の施設入居者から室料を徴収-などこと細かに負担増が並ぶ。
改革のコンセプトは「低所得層など社会的弱者への給付拡大」だというが、「弱者切り捨てのオンパレード」との批判も強い。