年金世代・予備軍「シニアの居場所」 低貸、演出…様変わりした「パチンコホール」1回当たりの費用は2960円、居ようと思えば1日過ごせる空間に

若い頃、パチンコホールに通った人も多いのではないでしょうか? パチンコホールという空間は、基本的に何のしがらみもなく、ちょっとだけ遊んでもいいし、居ようと思えば1日過ごせる空間です。

大型店には食事や喫茶のスペースもあります。ただし、本連載の趣旨として、あまりお金がかかる居場所は避けたいところ。そのあたりを踏まえて「居場所としてのパチンコホール」について考えてみます。

レジャー白書2022の「参加・消費の実態」の項目を見ると、パチンコの1回当たりの費用は2960円です。これは「外食」2890円とそう変わりません。ちなみに「バー、スナック、パブ、飲み屋」は4720円です。

この数字だけ見ると、食事1回分程度のレジャーと言えそうですが、それ以上に、パチンコホールは20年ぐらい前とはかなり様変わりしています。

まず「低貸」という営業スタイルの店が多くなっています。一玉4円で貸し出すところを一玉1円で貸し出すもので、同じ金額で4倍もの玉が貸し出されるのです。

しかし、出玉を景品に変えるときは4分の1にしかなりません。つまり、大勝ちを狙うのではなく、長く楽しみたい人向けのスタイルで、中には1円どころか0・5円で貸し出すスタイルの店もあります。

また「低貸」に加え、「甘デジ」という大当たり確率が高めだけれど出玉は少なめの機種や、「遊タイム」という機能を持ったパチンコ台も増えています。これは大当たりしないまま一定の回転数に達するとモードが変化し、大当たり確率が上がるなどのお助け機能が付与されるものです。

パチンコ台自体も、20年前よりも高性能になり、音楽や動画などの演出も満載です。ただし、エンターテインメント性の高いリーチで期待したものの、あっけなく外れてしまうガッカリ感も味わいます。

とくに20年前と変わったと感じるのが、ほとんどの店が法改正により「禁煙」または「電子タバコのみ」となったことでしょうか。また、郊外の大型のパチンコホールでは、野菜や卵、パンなどの大安売りイベントを開催したり、ゆったりした休憩スペースに漫画や新聞を準備したりして、長く居てもらうための工夫をしているように見えます。

レジャー白書によると、2003年に約32・4兆円だったパチンコ市場は21年には約14兆円に縮小しました。パチンコ業界も変わらざるを得ないのでしょう。

ある業界関係者は、「お店としては、20年前にパチンコを愛好していたようなシニアの方々にふらっと立ち寄ってもらえると一番うれしいはずです。そして長く遊んでいただければ」と話します。

大勝ちを狙いに行くのではなく、あてどなく1日過ごす居場所としてもよい所かもしれないと思いつつも、「せっかくなので勝つ秘訣(ひけつ)はないですか?」と聞いてみると、そんなものはないと笑いながらも「まずはやる気のある店を選ぶことです」とアドバイスしてくれました。例えば、人気の新機種が出るたびに入れ替えているような店がいい、とのことです。

1回飲みに行ったと思って、あまり期待をせずに、久しぶりにホールで過ごしてみるのもいいかもしれません。

藤木俊明 副業評論家。自分のペースで働き、適正な報酬と社会とのつながりを得ることで心身の健康を目指す「複業」を推奨。著書に『複業のはじめ方』(同文舘出版)など。

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