年金月17万円だが…月収36万円・勤続41年の会社員「60歳で退職」を全力で止められたワケ

多くの企業で「60歳定年」となっているため、60歳は多くの人にとって人生の岐路となるターニングポイント。働き続ける人、完全リタイアする人などさまざまですが、なかには「あと少し、働いたほうがいい」という人たちがいます。みていきましょう。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額

2022年に60歳…人生の岐路を迎える1962年生まれの人たち

高齢化が進むなか、健康なうちはいつまでも働き続けられる環境は整いつつありますが、定年制のある企業のうち「60歳」を定年にしている企業は72.3%(厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』より)。多くの人が、60歳を一つの区切りとしているでしょう。 原則的に年金の受給開始年齢は65歳。希望のうえ、減額されてもいいのであれば60歳から手にすることはできますが、そこは悩みどころ。60歳で完全リタイアすると、収入がない5年間は貯蓄を取り崩すしかない、減額された年金が生涯続くのも納得がいかない。両者を天秤にかけて、年金を受け取る人、受け取らない人、仕事を続ける人、完全にやめる人……いろいろです。 そんな岐路に立つ、2022年、60歳を迎える人たちは、1962年生まれ。すこし前のことなので、当時を少し振り返ってみると、当時の総理大臣は池田勇人。キューバ危機が起こり、あわや核戦争と、世界に緊張が走りました。東京都の人口は推計で1,000万人を超え、世界初の1,000万人都市が誕生したのも、この年でした。 そんな1962年生まれの人たちのうち、中卒で社会人になったのは1978年。日中平和友好条約が結ばれ、超高層ビル「サンシャイン60」が開館した年です。高卒で社会人になったのは、1981年。チャールズ皇太子・ダイアナ妃が結婚した年です。そしてストレートで大学を卒業し社会人となったのは、1985年。日航ジャンボ機墜落事故、ロス疑惑、プラザ合意と、世間を賑わした大きなニュースが連発した年です。 長い長い会社員人生を迎えて60歳定年を迎えた、1962年生まれの人たち。中卒であれば月32.3万円、高卒であれば月36.2万円、大卒であれば月51.4万円の給与を手にするところで、いったんひと区切りをつけるわけです(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。 5年後に受け取れる年金はどれくらいかというと、2021年度の老齢厚生年金加入者の受給額でいえば、平均月14万6,145円。これは繰上げ受給を選択している人たちも含む値なので、通常通り、65歳から受け取ったとなると、男性で17万0,391円、女性で10万9,205円が平均的な月受給額となります(厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より)。公的年金受給者のうち、過半数が「収入は年金だけ」という人たちで、十分かといえば、心許ないというのが本音でしょうか。

高卒で勤続41年…「44年特例」の要件クリアまで、あと3年

60歳で定年退職を迎えた人たち。中卒であれば約44年、高卒であれば約41年、大卒であれば約37年、会社員人生を頑張ってきたことになります。すべての人に「おつかれさまでした!」といいたいところですが、高卒の会社員で、1966年4月1日より前に生まれた女性であれば、「ちょっと待った―!」という声がどこからともなく聞こえてくるでしょう。そして「あと3年、会社員を」とアドバイスが……これは一体、どういうことなのでしょうか。 天の御告げかは分かりませんが、「あと3年」の根拠になっているのが、厚生年金の「44年特例」と呼ばれているものです。 会社員が手にする老齢厚生年金には大きく、60~64歳に支給されるものと、65歳以降に支給されるものの2種あり、60代前半に支給されるものは、「特別支給の老齢厚生年金」といわれています。これは1986年に年金支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことで「あと5年経たないと年金がもらえない、困った!」という人たちを救済する特別措置。 特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分に分かれ、それぞれ受給開始時期が異なります(図表)。一定の年齢以下の人は65歳になるまで報酬比例部分として年金の一部分しか受給できません。そこで、厚生年金保険料を44年以上納めてきた人たちに、報酬比例部分だけでなく定額部分も受給できるようにしました。これが「44年特例」です。「厚生年金に44年以上加入」「厚生年金から外れている」「報酬比例部分の支給条件を満たしている」の3つを満たせば、報酬比例部分に加えて定額部分も受給できます。 卒業後すぐ会社員になっていれば、厚生年金加入期間は中卒で約44年、高卒で約41年、大卒で約37年。中卒であれば60歳定年時点で特例期間の44年を満たしています。高卒であればあと3年働くと、44年の要件を満たすことができます。大卒は残念ながら65歳まで会社員を続けても44年には手が届きません。 特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分に加算される定額部分は年額78万円。現行、希望すれば65歳まで働き続けることができる環境が整備されつつあるので、「高卒であと3年、会社員を続けたら……」という人は、44年特例を念頭にきちんと検討していきたいもの。 長い3年になりそうですが、一考の価値はありそうです。

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