広がる「スポーツごみ拾い」 競技感覚で環境意識向上

 ごみ拾いにスポーツ競技の要素を取り入れた「スポーツごみ拾い」の大会が、全国各地で開かれている。収集したごみの種類と重量に応じて得られる得点で順位が決まる競技。楽しみながらごみ拾いをすることで、環境意識を養うのが狙いだ。運営団体は日本発のスポーツとして海外での開催も目指している。(森本昌彦)
 ◆1時間で90キロ超
 今月5日午前、横浜市都筑区の市営地下鉄センター北駅前の広場に約100人が詰めかけた。この日のスポーツごみ拾い大会の参加者だ。
 主催者から、決められた競技エリアから出てはいけない▽車道に飛び出さない-などのルールの説明が終わると、「ごみ拾いはスポーツだ!」というかけ声とともに競技がスタート。ごみ袋を手に21チームがごみを探し始めた。
 一見、ごみは少ないように見えるが、参加者たちは次々とごみを見つけ出す。ルール違反がないよう、1チームに審判1人が同行するあたりもスポーツ競技のようだ。
 開始から1時間後、競技が終了。燃えるごみ=100グラム10ポイント▽燃えないごみ=同5ポイント▽たばこの吸い殻=同100ポイント-などの配点でチームごとに得点を計算。優勝チームが決まり、表彰式も行われた。
 まさにスポーツ競技のような感覚だが、この日1時間で集まったごみは91・95キロ。参加した東京都市大学3年の中山亮太さんは「競技感覚で楽しかったし、駅の周辺にどんなごみが多いかということを意識させられた」と話した。
  ◆いずれは海外でも
 今回で18回目となる大会を運営するのは「日本スポーツGOMI拾い連盟」(東京都渋谷区)。代表を務める馬見塚(まみつか)健一さんが自宅近くでランニングしている際、ごみの多さに気付いたのがきっかけだった。
 ランニング途中にトレーニングを兼ねてごみ拾いをしているうちにスポーツ競技にする発想が浮かび、平成20年に知り合いの大学生らと連盟を結成。東京で第1回大会を開いた。
 「ごみ拾いだけでは意識のある人しか参加しない。スポーツだとそういう意識がなくても気軽に参加できる」と馬見塚さんは話す。実際、大会の参加者に聞くと、これまでにボランティアでごみ拾いをしたことはなく、スポーツだから参加したという人が多かったという。
 得点を競うといったスポーツのエンターテインメント性だけでなく、環境意識をはぐくむことも大会の目的。連盟のスタッフとして活動する武蔵野大学3年の井上翔太さんは「参加するまでごみ拾いに興味はなかった。今では普通に街を歩いていてもごみを探すようになった」と話す。
 こうしたコンセプトが共感され、大会の開催地は全国に広がっている。首都圏以外にも大分県や静岡県、山形県などで開催。馬見塚さんは「いずれは日本発のスポーツとして国外でも開催したい」。楽しいだけでなく、社会性もあるスポーツとして普及を目指している。
 ■ごみの総排出量は年々減少
 環境省の調査によると、平成20年度のごみの総排出量は4811万トン(東京ドーム約129杯分)で、前年度の5082万トンに比べ、5・3%減少している。1人1日当たりの排出量も20年度は1033グラムで、前年度の1089グラムから5・1%減っている。
 20年度のごみを排出形態別で見ると、生活系ごみが3118万トン、事業系ごみは1400万トン。生活系のごみが約65%を占めており、生活での意識向上がごみ削減の鍵を握っているといえそうだ。

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