広告マンガ、ネットで市場拡大 トレンド・プロ、受注3.5倍に

漫画を使って商品PRや広報ツールとする「広告マンガ」制作大手のトレンド・プロ(東京都港区)が企業や官公庁からの受注件数を伸ばしている。2010年10月期の年間受注件数は、5年前の3.5倍に相当する283件(前期比11件増)と増加。発注企業数も5年前の4倍の104社(同16社増)に増えた。分かりやすく親しみやすいなどの点が評価されているほか、コストが安いインターネット上だけで利用するケースが増えてきたためで、今後も市場拡大が予想されている。
 ◆在庫の心配無用
 トレンド・プロは企業など発注者の要望を聞きながらマンガのストーリーや構成を提案。最終的には同社に登録している約1000人の中から漫画家を選ぶ。これまでの累計制作件数は、10月末現在で935社・団体から2734件にのぼっている。
 同社の受注件数が増え始めたのは07年から。背景には、同社がホームページ「アドマンガドットコム」で登録漫画家リストを公開し、どのような“画風”の漫画家がいるか確認できるなどネットを通した発注が検討しやすくなったことがある。
 加えて、これまでの漫画冊子だけでなく、ネット上で掲載するパターンが増えたことも要因だ。ネット利用者が検索サイトから広告マンガを掲載するページを開き、興味を抱かせてから商品などのページに進んでもらう仕組みが多い。冊子のように不要な在庫を抱える心配がなく、読者が増えても増刷せずに済むなど低コストで済むのが主な理由のようだ。
 実際、同社が制作する広告マンガに占めるネット向けの割合は年々高まり、足元では約8割を占める。半面、景気低迷で企業側が発注コストを抑えているため「単価は下がっている」(岡崎充社長)という。
 広告マンガには、商品の販促や店舗への集客、社内報や従業員教育、IR(投資家広報)、官公庁による政策普及などの用途がある。
 例えば、最高裁判所から受注して制作し、裁判員に選ばれた人に配布される冊子「よくわかる裁判員制度Q&A」では、制度についての疑問に裁判官が直接答える形で描かれている。最高裁は「イラスト部分だけを見ても、制度の大まかな内容が分かるようになっている」としており、マンガならではの訴求効果が発揮されている。企業向けでも、金融関連サービスの内容を分かりやすく解説したソニー銀行の「できるビジネスパーソン」シリーズ(冊子とインターネット)などがある。
 ◆薄れる抵抗感
 一方で、統計学や金融工学、哲学、資格取得ノウハウ、決算書の読み方などの専門知識をマンガで分かりやすく解説する本の出版も増えている。
 トレンド・プロの岡崎社長は広告マンガの増加について、「子供のころにマンガに親しんだ世代が企業の幹部に就く年齢になり、マンガに対する抵抗感がなくなったこともある」と分析する。漫画家が個人で受注するケースもあり正確な市場規模は不明だが、ネットという利用媒体が増えたこともあって、「広告マンガ」市場は拡大を続けそうだ。(高橋寛次)

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