広報部門で担当しているのは「報道対応」「社内広報」だけ

 生活者がニュースに接触しなくなってきている……。こういう話になると、それが良いことなのか、悪いことなのかという議論になりがちです。が、企業のPR担当者は、これをもう少しドライに捉えるべきでしょう。良い/悪いはひとまず横に置き、生活者がニュースに接触しなくなってきており、その傾向が今後ますます強くなると予測される現在、PR担当者はその業務領域について早急に検討せねばならないと言えるのではないでしょうか。
 財団法人 経済広報センターが2012年に発行した「第11回 企業の広報活動に関する意識実態調査報告書」の一番最初には、企業のPR活動を担う広報部門の業務領域に関するデータが掲載されています。
 これを見ると、広報部門で対応している活動の1位は「報道対応」で100%、2位は「社内広報」で92.7%とあります。3位の「社外情報の収集」がこれらの数字にくらべてかなり低い62.8%ですから、広報部門がいかに「報道対応」と「社内広報」に注力しているかをうかがい知ることができます。
 「報道対応」と「社内広報」に注力している企業が多いことは決して悪いことではありません。これらは他の部門には真似できない、PR担当者の専門領域と言えるでしょうから、広報部門がこの業務領域を担い、力を注ぐことは当然のことです。
 問題は他の業務領域以外の数字がこれらに比べてかなり低いことです。3位の「社外情報の収集」が「報道対応」の3分の1以下である62.8%であることは先に述べたとおりですが、「ブランド戦略の推進」はさらに低く50.9%、「ソーシャルメディア」に至ってはわずか18.8%です。
 「ブランド戦略の推進」や「ソーシャルメディア」も企業にとっては不可欠の機能のはず。にもかかわらずこれらを広報部門で対応している企業は多くないというデータが出ています。ということは、これらの機能を広報部門ではない部門で担当している企業が多いということが言えるかと思います。
 別の視点で見れば、広報部門に期待されるのは「報道対応」と「社内広報」だけで、PRの重点領域である「ブランド戦略の推進」や「ソーシャルメディア」は別の部門でやるので、広報部門は担当しなくても良いとする企業が多いということが言えるでしょう。
「報道対応」に固執するか、業務領域を広げるか
 生活者がニュースに接触しなくなってきている今、広報部門はその逆を行くように「報道対応」だけに注力している……。生活者との接点がもともと少ない「社内広報」を除いて考えると、このようなことが言えると思います。
 生活者のメディア接触行動の中でニュースの地位が揺らいでいる中で、広報部門がニュースしか担当しないということは、すなわち広報部門の地位が揺らいでいるということにほかなりません。顧客である生活者と広報部門の接点は小さく、少なくなっていっているということが言えるでしょう。
 この危機に際し、広報部門には2つの選択肢があります。
 1つ目は、ニュースの存在感が以前の水準に戻ることを期待し、現在行っている「報道対応」に特化し続けること、2つ目は、生活者のニュース以外のメディア接触行動の部分に注目し、「報道対応」以外の業務領域に足を踏み入れることです。
広報部門で担当しているのは「報道対応」「社内広報」だけ
 ニュース接触は今も昔も生活者のメディア接触行動の目的のナンバーワンであると言えるでしょう。ただ今と昔で違うのは、それがオンリーワンと言ってよいほどの揺ぎないナンバーワンなのか、2位以下の追随を許しているナンバーワンなのかということです。
 広報部門はニュースの地位がどんどん揺らいでいくのに気づいていないわけではなかったと思います。インターネットが本格普及した時、これを広報部門の業務領域としてよいのか議論されたでしょうし、多くの生活者がソーシャルメディアを使うようになった時も注目はしたでしょう。
 ですが、「それでもニュースがナンバーワン」ということに惑わされ、議論や注目だけで終わってしまったという広報部門は多いのではないでしょうか。
 しかし今やその言い訳はできそうにもありません。
 冒頭でご紹介したように、ニュースの一番近くにいるニュース編集者の方々ですら「ニュースがナンバーワン」の時代の終焉をリアルに予知し、危機感を覚えているようなのですから。
 この危機を前に、さて広報部門はどうすればよいのでしょうか。

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