国内有数の水中花火大会で、世界遺産の島・宮島(廿日市市)沖の海上で繰り広げられる「宮島水中花火大会」の実行委員会が、大会を打ち切る方針を固めたことが13日、分かった。約5万人の観客がフェリー乗り場に集中するなどする離島特有の安全対策の難しさに加え、新型コロナウイルス感染防止となる「3密」を避ける開催方法の見通しが立たないことなどが理由。半世紀近くの歴史に幕を閉じることになる。 【動画】過去の宮島水中花火大会 同実行委は14日に宮島で臨時の実行委員会を開き、大会の打ち切りについて提案する見込み。実行委に加わっている廿日市市は、事前に日時を告知しないサプライズ花火を市内で開催するなどの代替策を検討するとみられる。 打ち切りの最大の理由は事故のリスク。大会当日は1年で最多の約5万人が宮島に渡り、花火大会が終了する午後9時前からフェリー桟橋に長い列ができる。対岸の宮島口でも、国道2号を中心に発生する渋滞や違法駐車などの問題を抱えている。また、海上でも花火見物のプレジャーボートがカキいかだに乗り上げるなどの事故が起きている。 花火大会を巡っては、兵庫県明石市で見物客11人が死亡する歩道橋事故があった2001年以降、主催者に安全管理の責任がより問われる状況となっている。京都府福知山市の花火大会で13年に起きた露店爆発事故以降は、主催者に防火管理体制の構築が義務づけられた。実行委では、年々厳しくなる安全対策に対し、これ以上の態勢強化は限界との声が上がっていた。 さらに新型コロナも影響。感染拡大を防ぐため、大人数が集まるイベントの開催が難しくなっているほか、コロナ禍で経営が厳しい企業からの協賛金集めも不透明となっている。 大会は例年8月に開かれてきた。今夏は東京五輪・パラリンピックの開催延期の影響で十分な警備態勢を維持できないなどとして、20年に続いて開催中止がすでに決まっている。 <宮島水中花火大会> 廿日市市宮島町にある厳島神社の大鳥居沖の海上で繰り広げられる花火大会。約5千発を打ち上げ、一部は海水面から半円状にダイナミックに開くのが特長。旧宮島町が1973年、「宮島町花火大会」として始めた。大会中止は過去3回。他都市で起きた花火事故の影響を受けた75年、西日本豪雨の影響で輸送手段となるJR山陽線の臨時ダイヤが組めなかった2018年、東京五輪と重なり十分な警備態勢が確保できないとした20年。今夏も五輪の延期により中止が決まっている。