秋の行楽シーズンを迎え、毒キノコによる食中毒被害が相次いでいる。今年は9月に雨が多かった上、残暑も厳しかったためキノコの生育が盛んという。専門家は「食用か有毒かの判別は困難。山や公園で採って食べるのは、できるだけ控えてほしい」と注意を呼び掛けている。(鈴木雅之)
厚生労働省によると、毒キノコの被害は例年、山菜採りが盛んになる秋頃に増える。食用キノコとの判別が難しく、誤って食べて嘔吐(おうと)や下痢といった症状や、意識の混濁を引き起こすことも。重症の場合はけいれんや呼吸困難に陥ることもあり、全国で昨年までの10年間に13人が亡くなっている。
今年は1月〜10月6日の速報値で、21人が食中毒にかかった。うち17人が9、10月の被害という。
神戸市森林植物園の担当者は「9月の残暑と多雨はキノコにとって好適な生育環境だった」と話す。その上で「大きく育って人目につきやすくなるので、つい採って食べたくなるかもしれないが、有毒かどうかを見分ける法則がなく、専門家でなければとても見分けられない」と注意を促す。
例えば、クサウラベニタケはホンシメジと似ているが、間違って食べると、食後20分〜1時間程度で嘔吐や下痢、腹痛の中毒を起こす。今月5日には兵庫県西脇市で、クサウラベニタケをすまし汁にして食べた夫婦が下痢や嘔吐を発症した。ツキヨタケはシイタケやヒラタケと酷似。ニガクリタケもクリタケやナメコと間違われる。いずれも判別は容易ではない。
茎が縦に裂ければ食べられる▽虫が食べていれば食べられる▽派手な色をしていなければ食べられる−といったよく聞く「見分け方」についても、厚労省は「誤解や、誤った言い伝え」と指摘。「確実な見分け方はなく、自分の判断だけで食べることは絶対に避けてほしい」としている。