役目終えたブラウン管 資源の宝庫に

 「カンカンカン!」、工場内に甲高い音が響く。ベルトコンベヤーを行進する無数のブラウン管は、UFOの船団のように見える。防塵マスクとゴーグルに身を包んだ作業員が、その一つ一つを、新しい資源として生まれ変わらせていく。
 テレビ放送のデジタル移行から2カ月、テレビの今を追った。
 大阪・ミナミの家電量販店「ビックカメラなんば店」。薄型テレビが所狭しと並ぶ。アナログ放送の終了間際は、駆け込み需要で長い行列ができたが、今は落ち着きを取り戻している。
 一方、電機店からサブカルチャーの店まで多様なショップが軒を連ねる大阪・日本橋。リサイクル中古品が並ぶ「日本橋商店会」では、今でも中古のブラウン管テレビが3千円程度で売られている。地デジチューナーを付ければ国内でも視聴が可能だ。
 役目を終えたブラウン管テレビは資源の宝庫。三重県伊賀市の家電リサイクル工場「関西リサイクルシステムズ第2工場」では、ブラウン管テレビのリサイクルが進む。
 ここでは、1日に約2千個のブラウン管テレビを解体する。各パーツは、銅や鉄などに分別して粉砕する。
 昨年度に全国で回収されたブラウン管テレビは約1800万台。そのうち約85パーセントが資源としてリサイクルされた。
 同社の中山和博社長(59)は、「できるだけ細かく分けて純度の高い素材を取り出すようにしています」と話す。
 テレビ新世代の幕開けとなった地上デジタル放送。薄型テレビの進化に、旧製品のリサイクル。テレビの楽しみがまた一つ広がった。(写真報道局 鳥越瑞絵)

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