東日本大震災後、まちづくりに関わる若い人材を育成しようと気仙沼市が主催してきた実践塾「ぬま大学」が、開始から10年目を迎えた。これまでに卒業した「ぬま大生」は計126人。市内で新たなビジネスを始めたり、子育て支援の団体を設立したりするなど、着実に活躍のフィールドを広げている。(気仙沼総局・藤井かをり)
10~40代の市民や移住者ら13人による第10期生の最終報告会が17日、市まち・ひと・しごと交流プラザであった。10期生は5月から約半年間、気仙沼の課題やこれまでの自身の体験を掘り下げる講義などを通じ、地域活性化に向けた「マイプラン」を磨いた。
報告会では、プロジェクターを使って具体的な計画などを説明。統計を使った企業経営の改善支援や、漁業者と消費者を食でつなぐ取り組みなどが披露され、菅原茂市長や市内の経営者らがアドバイスを送った。
最高賞の市長賞には、子育て世帯向けの体験型宿泊施設を提案した保育士政岡香凜さん(25)=大分市出身=が選ばれた。
政岡さんは、市内で働きながら短期間滞在する「ふるさとワーキングホリデー」を機に移住。「ぬま大に参加し、やりたいことが明確になった。参加者とのつながりは今後の糧になる」と意義を話した。
ぬま大は震災後、「若い人の挑戦を後押しするまち」(菅原市長)を掲げ、企画力の育成やネットワークづくり、地域に対する当事者意識の醸成などを目的に始まった。
参加した若者は廃漁具をリサイクルするビジネスを興したり、旅人や地域住民らが交流できるゲストハウスを設立したりするなど、多彩な取り組みを展開。復興まちづくりに新たな風を吹き込んでいる。
運営を担う同市の合同会社colere(コレル)は、ぬま大生が手がける約30の活動を一覧できる市内のマップを制作した。小林峻代表(36)=東京都出身=は「若者がチャレンジすることでまちの可能性が広がり、応援する土壌も耕される。今後もサポートを続けたい」と強調する。