2016年4月の熊本地震発生以降、熊本市内の繁華街の飲食店で高額な料金を請求される「ぼったくり」被害が多発し、年間数件だった熊本県警への被害相談が17年は219件に急増したことが分かった。客引き行為への規制の緩さと、復興マネーに目を付けた県外の客引きグループの進出が要因とみられ、トラブルの一部は傷害致死事件などにも発展。市は県警と連携し、客引き行為を取り締まる条例の制定を目指す。
県警によると、客引き行為を規制する条例が既に施行された福岡や大阪から、少なくとも三つのグループが「復興関連工事などでお金が回っている」とみて熊本に進出。熊本市中央区の下通アーケード周辺でガールズバーを経営し、一部のグループは指定暴力団に用心棒代を納めていた。ガールズバーの客引きは、酔っぱらった男性に「飲み放題3千円」などと声を掛けて店へと誘い、店では1人数万~30万円を請求する。県警には「1人約70万円を支払わされた」との相談も寄せられているという。
関係者によると、3月末には指定暴力団との関係が確認されているガールズバーでの高額請求をきっかけに、市内の男子学生=当時(20)=が約310万円の借金を抱え自殺。別のガールズバーの男性経営者=同(29)=が、支払いを巡ってもめた客に暴行され死亡する事件も発生した。
高額な料金設定を禁じた法律はなく、ぼったくり被害を防ぐには客引き行為を取り締まるしかない。スナックなどホステスの接待がある飲食店は風営法で規制されるが、カウンター越しに酒類を提供するガールズバーは対象外。現在の熊本県条例の規制対象は路上でのつきまとい、腕を引っ張るなど悪質な行為が要件となる。
熊本市生活安全課の担当者は「繁華街のイメージ悪化でにぎわいに水を差すのが心配だ。来年秋に熊本で開催されるラグビーワールドカップ、女子ハンドボール世界選手権を控え、他の政令市を参考に本年度内に条例を整備したい」としている。