東日本大震災からの復興加速に欠かせない全国の自治体からの応援職員が、派遣期間の長期化や激務で疲弊している。派遣先で男性職員が自殺したケースもあ り、現場の負担軽減を急ぐ必要があるが、全国的な人手不足のため状況改善は見通せない。被災自治体は息の長い支援を訴えている。
<悩み共有>
「仕事から帰るとイライラしますね」「この年になって友達ってどうつくるんだろうって悩みます」。8月中旬、宮城県富谷町の研修所。全国から同県内に派遣された約70人が、仕事やプライベートの悩みを赤裸々に打ち明けた。
派遣職員の交流機会をつくろうという県の取り組みで、一昨年に始まった。気仙沼市に兵庫県から派遣された松本武知さん(37)は「抱えている悩みが自分だけじゃないと感じられてよかった」と安堵(あんど)の表情を見せた。
応援職員の勤務が長期化するのに伴い、メンタルヘルス対策は重要さを増す。岩手県大槌町は、2013年1月に兵庫県宝塚市から派遣されていた男性=当時(45)=が自殺したのをきっかけに、対策を強化した。
岩手医科大と提携し週3回の健康相談所を開設。管理職にはメンタル講習を行っている。町総務課の担当者は「仮設住宅で単身生活する応援職員も多く、一番心配なのが健康。正規職員と応援職員が共にうまくいってこそ、復興への両輪がそろい前へ進める」と話す。
<再び赴任>
被災自治体にとって、発生から間もなく4年半を迎える震災の風化や関心低下も気掛かりだ。追い打ちをかけるように20年東京五輪・パラリンピック開催といった大型事業を控え、公共事業に関わる技術職を中心に全国で人手不足が深刻化している。
派遣元の状況も心もとない。東日本の自治体関係者は「働き盛りの30代は子どもが小さく、赴任しにくい。結局、一度行った人が再派遣されるケースがあった」と人繰りの困難さを嘆く。
宮城県を訪れた佐賀県嬉野市の中島庸二副市長は「被災地は復興事業を抱え大変だと思う。たくさん派遣したいが、市町村合併を経験したこともあって人手に余裕がない」と話した。
<継続訴え>
阪神大震災後、神戸市は厳しくなった財政状況から、職員の3分の1に当たる約7200人を削減した。そんな苦しい状況の中で現在、宮城県の3市町に計12人を派遣している。担当者は「全国から応援してもらった恩がある。東北をできる限り応援したい」。
宮城県は8月下旬、派遣元自治体の関係者約160人を招待し、被災地を巡るバスツアーを組んだ。沿岸部で進む膨大な復興事業を直接見て、人手不足の実情を 知ってもらうためだ。石巻市では亀山紘市長が、完成したばかりの災害公営住宅前でマイクも使わず派遣継続を訴えた。「職員支援のおかげで、遅れながらも復 興は着実に進んでいます。でも、まだまだ事業が残っているんです」