韓国人元徴用工4人が新日鐵住金を相手に損害賠償を求めていた裁判で、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決が確定した問題。現在、韓国では少なくとも15件の徴用工訴訟が起こされ、対象の日本企業は約70社にのぼると報じられている。新日鐵住金をはじめ、三菱重工業、IHI、東芝、日産自動車、パナソニック、日本郵船、住友化学、王子製紙など日本を代表する企業が並んでいる。
しかも、徴用工訴訟の動きはさらに広がっていく可能性が高い。韓国政府がまとめた「日本強制動員現存企業299社リスト」が存在する。李明博政権末期の2012年8月、国務総理室に置かれていた『対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制労働動員犠牲者等支援委員会』が作成したとされるリストで、2012年現在の企業名と所属していた旧財閥名、当時の企業名、業種が一覧になっている。
名指しされた企業は、今後想定される訴訟攻勢にどう備えようとしているのか。すでに訴訟中の企業の中には、韓国からの撤退を思わせる動きを見せたところもある。徴用工訴訟で新日鐵住金に続く標的とされている三菱重工だ。
同社はすでに3件の訴訟を抱え、いずれも下級審では同社に賠償金支払いを命じる判決が出された。そのうち1件は今年12月5日に高裁判決、もう1件は日本の最高裁にあたる大法院での審理が開始されている。新日鐵住金に対する“判例”からしても、三菱重工が逆転勝訴する可能性は極めて低い。
その三菱重工は今年春、グループ会社の韓国現地法人を精算した。同社広報部は、
「もともと事業分野別に本社事業の整理を進める一環として、本社グループ会社の韓国現地法人を清算しております。これは徴用工の訴訟とは直接関係はありません。新たに韓国で立ちあげた法人もあります。(韓国に対する投資縮小は)現時点ではとくにありません」
と説明する。だが、同社の子会社である三菱重工コンプレッサが三菱商事と合弁で新たに韓国に設立した「MHI Compressor Korea, Ltd.(MCO-K)」(資本金1億円)は10月に開業したものの、社長以下社員わずか4人のアフターサービスの会社だ。
三菱重工の宮永俊一・社長は新日鐵住金への判決について、「非常に長い過去の経緯があり、我々は新日鐵住金さんと全く同じ立場でやってきた。そうした立場に立つ者としていえることは、『極めて遺憾なことだ』と。新日鐵住金さんと同じ考えだと私個人はいうべきだと思う」と述べた。
「重工さんは判決後の差し押さえリスクを考えて、今のうちに韓国国内に置いておく資産を極力減らそうと考えているのではないか」
訴訟対象となっている他の企業幹部にはそう映っている。