組織にはさまざまなタイプの「バカ」がいる。とくに厄介なのが、「会議」「規則」「数字」を振りかざす、「カイシャの3バカ」だ。だが安心して欲しい、カイシャの「バカ」につける薬はないが、身を守る方法はある。
「3バカ」の名付け親でもある心理学博士の榎本博明氏は、その名もズバリ『カイシャの3バカ』(朝日新書)という著書のなかで、3バカの深層心理を解析し、対処法を紹介してくれている。
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バカは自分がバカであることに当然自覚がなく、精神的に「健康」で、次の3つの幻想を抱いている。
(1)非現実的なほど肯定的な自己評価
(2)過大視されたコントロール感
(3)非現実的な楽観主義
だから周囲の人たちを困らせているのに、いつもアッケラカンとしていられるのだ。
組織のバカでとくに手に負えないのが、「会議」「規則」「数字」が好きなバカたちだ。
●どうして彼らは会議が好きなのか?
→仕事が出来ない上司でも、存在を誇示できるからである。
●どうして彼らは規則が好きなのか?
→自分で考えて判断する能力がないからである。理詰めで説得する自信がないからである。
●どうして彼らは数字が好きなのか?
→この理由はいくつも挙げられる。論理的思考能力が欠けているから。どんなに鈍感でも数字なら読めるから。人と交流が出来ないので、数字にしがみつくから。そして、なんと、数字好きは実は数字に弱いから!
では、「3バカ」に共通する心理構造はなんだろうか?
まず挙げられるのが、自信のない保身的な小人物であるという点だ。彼らは秘かに「劣等コンプレックス」をかかえているため、「敵意帰属バイアス」という現象がはたらく。間違っても、「バカにしやがって!」という気持ちにさせてはいけない。
次に挙げられるのが、「自分好き」であるという点。つまりは「自己愛過剰人間」である。極度に傷つきやすいので、勝手に「裏切られた!」という被害者意識をもつ。しばしば攻撃的な態度に出るので、要注意。
つまり、組織にはびこるバカは、自信のない可哀そうな人々なのである。こうした自信のない上司や自信のない部下の「見下され不安」をどう解消してやるかが、身を守るポイントになる。
重要なのは、「人は理屈では動かない」という“真実”。そして、「情動コントロール志向のコーピング(対処法)」と、「情緒的コミュニケーション」の2つだ。
具体的には、どうしたらいいのだろうか?
会議は大いに、かつ、あの手この手で上手にサボろう。規則好きのためには、前例を徹底的に洗い出し、例外規定を提案しよう。数字好きに対しては、相手の思考力のなさに合わせよう。こちらに都合の良い数字を強調するのもいい方法だ。数字好きは「なるほど」とすぐ乗ってくるだろう。
カイシャのバカに負けてはいけない。イライラせずに、上手に対処すれば、バカも無害化できる。カイシャのバカから身を守ることはすなわち、バカから組織を守ることでもあるのだから。