宮城県南三陸町の県漁協志津川支所青年部が志津川湾で、東北初の人工採苗によるヒジキ養殖の事業化に向けた実験に取り組んでいる。湾内で養殖可能な海産物を拡大し、新たな収入源の確保を目指す。
実験は2年目を迎え、町内でカキやワカメの養殖を手掛ける30代の漁師4人が参加。県気仙沼水産試験場などが技術面で協力している。
1年目は中間育成と人工採苗を実施。中間育成は湾内で採取した長さ約15センチのヒジキの根をロープに挟んで海に垂らし、5カ月ほどで収穫サイズの1メートルに育てた。地元の水産加工業者から品質のお墨付きも得た。
人工採苗は同試験場の協力を得て、中間育成したヒジキを受精させて約30万個を採卵。ホタテやカキの貝殻に付着させて海に投入したが、海中の虫による食害で失敗に終わった。
国内のヒジキ養殖は山口県や大分県など西日本が盛んだが、東北は魚種が豊富なため、取り組む漁師がほとんどいなかったという。
メンバーの小野具大(ともひろ)さん(39)は「全てが手探りの挑戦。自分たちが育てた種苗で養殖することを最終目標にしている」と語る。
今年は養殖に適した漁場の調査に加え、種苗の改良に重点を置く。6日はメンバーが湾内で刈り取ったヒジキの根や茎を挟んだロープを湾内の養殖いかだに設置した。
実験を支援する同試験場普及指導員の斎藤憲次郎さん(42)は「海の環境変化で今後、養殖できる魚種が変わるかもしれない。新たな可能性を探るのは、将来に向けた種まきになる」と話す。
青年部は漁業権免許の次回更新年となる2023年までの事業化を目指す。リーダーの菅原学さん(38)は「先輩漁師も期待している。東北でもヒジキ養殖の技術を確立し、浜の新たな産業にしたい」と意気込む。