急増《トナラー》する男たちの「狙い」は何? 女性の嫌がる様子がたまらない…何もしない「痴漢」がなくならない理由

「トナラー」「ぶつかり男」……遭遇したことがある女性も少なくないはず。彼らの目的は痴漢行為。その卑劣な手口について前半記事『「小学生男子がわざと私の胸にひじを当ててきて…」あえて隣に座る《トナラー》、女性たちが遭遇したあまりに「卑劣すぎる行動」』に引き続き、専門家に聞いた。

女性の近くに座ることが「快感」

空いている電車内などでわざわざ隣に座ってくる男たち、通称「トナラー」。彼らによって不快な思いをした経験がある女性たちは少なくない。

トナラーに限らず、ぶつかり男やエスカレーターで距離を詰めてくる男など、日常のちょっとした場面で不快な思いをするケースは後を絶たない。

痴漢かな」と思ってもその判断はできず、ただもやもやとした不快な気持ちを抱き続けることになる。

「多くの『トナラー』は痴漢でしょう。当院に痴漢の再犯防止プログラムを受講し治療にくる方でもそうしたことをしていたと明かす人は非常に多いんです」

性犯罪痴漢加害者の治療などを行う大船榎本クリニックの精神保健福祉部長で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏はそう述べる。そしてトナラーの手口について次のように説明する。

「座って女性の身体に密着させたり、腕や肘で身体を触ったり。中には新聞やカバン、組んだ腕の下から身体に触れるケースもあります。さらに中には触れずに匂いを嗅ぐ、性器を露出するといったタイプの加害行為もあります。

痴漢は何も触れてくるばかりではないんです。隣に座る、ぶつかる、匂いを嗅ぐ……など、バリエーションがあるんです」(斉藤氏)

多くのトナラーは必要以上に触れるなど、痴漢行為はしないという。ほんの少しの接触から相手のぬくもりを感じたり、匂いを楽しむ、受け入れられていると誤認し承認欲求を満たす、それが彼らの快感になっているからだ。

支配欲や達成感を満たしている

「そうしたタイプの痴漢の場合は、加害行為かどうかの判別が非常にしにくい。そのため、ローリスクでな中でハイリターンな行為といえます。そこまでの危険を冒さずに多くの快感という報酬が得られる、と彼らは考えるのです」

被害に遭った女性にしてみればたまったものではない卑劣な行為だが、痴漢として罪に問うのは非常に難しい。

「『トナラー』の場合でいうと、ほとんどが『何もせず、ただ座ってるだけ』なんです。とはいえ、空いている席で密着されているだけで女性からすれば不快で、結果的に悔しい思いもします。実はそれが彼らの狙いでもあるんです」

痴漢はなにも身体に触れたり、相手の匂いを嗅いだりして性的欲求を満たすばかりではない。そこには支配欲や達成感もあるのだ。つまり女性が嫌がるところを見ることで喜んでいる。

それはぶつかり男にも通ずるところがある。

被害を訴える手段がない難しさ

駅などですれ違いざまに女性の身体にぶつかる「ぶつかり男」。腕や肩で女性の身体に触れるばかりではなく、自分の力を誇示し、相手が痛がっている姿を見ることが快感なのだ。

「ぶつかり男も、完全に相手を選んでやっています。私は比較的体格が大きい男性ですが、ぶつかられたことはありません」

トナラーもぶつかり男の被害も昔から起きている。それがSNSなどの発達により、拡散され、注意喚起が呼びかけられたことで表面化してきた。

痴漢もそうです。多くの女性が被害に遭ってきましたが、一昔前昔は被害を訴える以前にれば『自意識過剰だと思われるかもしれない』『報復されたらどうしよう』などと考えてしまい、泣き寝入りしたケースが多かったです『なかったこと』にされてきました。

ですが、最近になり、性暴力を含めたジェンダーの問題に関するなど啓発が少しずつ増えてきたことも相まって訴えられるようになり、問題がだいぶ可視化されてきたんです」

だが、痴漢のように犯罪行為として訴えることができないのが、トナラーの難しさなのだ。多くの女性が「嫌だな」と思っていても裁く手段がない。

それ「間接的な性加害犯罪」です

接触はなくとも、空いている電車で隣に座ってきた、匂いを嗅がれたという被害を声にあげる訴えることで加害者の輪郭も徐々に明らかになっていくと斉藤氏は強調する。

「通常、空いている電車でわざわざ見ず知らずの人の隣には座りません。相手が不快に思うかどうか、つまりパーソナルスペースということを普通は想像しながら生活します。これも広義の意味で性的同意の概念うちに入ってくるいると思うんです。

もし、痴漢行為を目的としていない場合であえて隣に座ってくるならその人はパーソナルスペースの尊重に関する同意の概念が欠如しているか、空間認識の能力になんらかのトラブルを抱えていることも考えられます。

対応する手段としては『タイムアウト』といって、その場から離れることが妥当な選択でしょうしかで決ません。何もされていなければほかの人に助けを求めるのも難しい。

痴漢のバリエーションについて電車内に掲示するのも手です。身体を触ったり、密着させてくるなど誰もがイメージできる痴漢のほかにも、パーソナルスペースを尊重せず隣に座る、においを嗅がれるなど、加害のバリエーションを掲示しておくだけでも抑止力になると考えられます」

空いている電車内でわざわざ隣の席にわざと座るのは「ハラスメント」で「痴漢」である。

そうした目的で電車にのる「トナラー」たちは自分たちのしていることは「間接的な性加害犯罪」で、多くの女性たちを不快にさせ傷つけている行為だということを改めて認識する必要があるはずだ。

【こちらも読む】『「痴漢」は「男性の娯楽」…かつて「日本の雑誌」で語られていた「衝撃的すぎる内容」』

タイトルとURLをコピーしました