「恋愛が面倒」と感じる20~30代の未婚男女が増えている。中には「今は恋愛をしたくない」「どうすれば人を好きになれるか分からない」といった “恋愛モラトリアム”に陥る若者も少なくない。一時期、「草食系男子」「肉食女子」などという言葉が流行ったが、結婚適齢期を迎えた若者たちに今、何が起 こっているのか。
4割の未婚男女が恋人欲しくない
内閣府が先月公表した「結婚・家族形成に関する意識調査」では、若者の恋愛観が浮き彫りとなった。
調査は全国の20~39歳の男女7千人を対象に、昨年12月~今年1月に実施。2643人から回答を得た。
その理由は「恋愛が面倒」(46・2%)が最多で、「自分の趣味に力を入れたい」(45・1%)▽「仕事や勉強に力を入れたい」(32・9%)▽「恋愛に興味がない」(28・0%)-が続いた。
“コンプレックス”の裏返し?
「恋愛が面倒」とする若者の心理について、恋愛学などの講義を持つ早稲田大学国際教養学部の森川友義(とものり)教授(政治学)は「思うようにいかない現実へのやりきれなさが投影されている」と見る。
そもそも異性と付き合うには、デートで着る服や食事、遊びにかけるお金が原資として必要だが「今の若者の雇用形態は多くの場合が非正規。自身が暮らしていくのがやっとで恋愛にかかる費用を捻出できない」と森川氏。
さらに「人は投資をしたら、その見返りを期待するものだが、恋愛ではそのような投資ができない。結果が望めないものに時間を割くことは『面倒』ということなのだろう」と分析する。
ネット環境が、恋愛をやりにくくさせている?
少子化ジャーナリストの白河桃子氏は社会のIT化が恋愛にもたらした影響に着目する。
それによると「恋人が欲しいか」の問いに、恋人がいない未婚男女の4割が「欲しくない」と回答している。
白河氏によると、社会のIT化は平成12(2000)年頃から加速。近年は自身の私生活や考えを公開するブログをはじめ、他者と瞬時につながって意 見交換できるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が普及しており出会いのチャンスが増える一方、恋愛で生じる私的な感情を不特定多数に知られる 機会も増えた。
「日本人はもとももと恋愛下手だが、自分がどう思われているかがネット上にさらされる場面が増えるなど、恋愛がしにくい状況が生まれている」と白河氏はいう。
さらに、個人の欲求を満たすさまざまなコンテンツがネット上に登場したことで「男性は現実世界にいる女性でなくても性欲を発散できるようになり、女性は恋愛以外に熱中できるものをみつけた」と語る。
こうした中、最近は「今は恋愛をしたくない」「どうすれば人を好きになれるか分からない」といった恋愛することを一時休止する“恋愛モラトリアム”に陥る若者も増えていると分析している。