悪名高い“在職老齢年金” 早ければ2021年にも廃止か

人生100年時代、国は「もはや60代は高齢者ではない」といい、生涯現役で働けるエイジレス社会を目指す方針を掲げている。だが、年金には、60歳以降も働いて多くの給料を稼げば支給額を減らされる「在職老齢年金」(在老)の制度があり、年金受給世代の労働意欲を著しく萎えさせてきた。

 この“悪の年金カット”の制度がついに廃止される。働くシニアには年金増額のチャンスである。あなたが何歳から、どんな働き方と年金のもらい方をすれば年金額を最大化できるのかを見ていこう。

 在職老齢年金は、企業が60歳以上の社員を安い給料で働かせるための制度――という側面がある。関西の機械部品会社勤務のAさん(64)は、60歳の定年後、同じ会社で嘱託として働いている。

「定年後も最初はフルタイムで働いていましたが、62歳から年金(厚生年金の特別支給)約8万円をもらうようになったのを機に週3日勤務にしてもらいました。月給は20万円。経理から、『それ以上稼ぐと年金を減らされますよ』といわれ、長年働いてせっかくもらえるようになった年金が減るのは割に合わないと考えたからです。老後の資金を考えると本当はもっとバリバリ稼ぎたいのに、釈然としない気持ちが続いています」

 在職老齢年金は、60歳以降も厚生年金に加入して働きながら年金をもらうと、給料に応じて年金がカットされる仕組みだ。65歳未満の人は「月給+年金」が28万円を超えると、超過分の半額が年金から減額(支給停止)される。65歳以上の場合は、47万円を超えると同様の年金減額が始まる。

 Aさんの月給と年金の合計は28万円だから、年金を減らされないギリギリの給料に抑えた働き方を選んできたのだ。たしかに、図にあるように年金カットを気にせずたくさん稼いでも、総収入がさほど変わらないのだから、「働き損」で報われない。

 だがここに来て、そんな高齢者の働き方を一変させるニュースが舞い込んだ。

 政府は6月21日に閣議決定予定の「骨太の方針」(経済財政の運営と改革の基本方針)で在職老齢年金の廃止を打ち出し、自民党も参院選公約に「将来的な廃止を展望しつつ見直す」と盛り込んだ。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。

「もともと悪名高い制度だったので、選挙に有利と考えて公約に入れたのでしょう。選挙対策ではあっても、金融庁の報告書問題で年金不信感が高まっているだけに、政府・与党は選挙後に公約を反故(ほご)にはできない。在職老齢年金は廃止の流れと見ていいでしょう」

 廃止までのスケジュールも具体化しつつある。政府は選挙後の年金改革で厚生年金保険法改正案をまとめて来年の通常国会に提出する方針だ。成立すると1年後に施行。早ければ2021年にも在老(年金減額)の制度は廃止される可能性があるという見方が有力だ。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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