悪質クレーマーによる暴言、脅迫、長時間拘束……店員に対して悪態をつきまくる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」の問題が深刻化。理不尽な怒りをぶつけ、不当な要求をしてくる客に堂々と「NO」を突きつける社会はやってくるか!?
◆対抗策の要となるカスハラ加害者の正体
カスハラに遭遇した場合、スタッフとしてどのように対応したらいいのか。石崎冬貴弁護士が解説する。
「まずは相手をなだめるためにも『不快な思いをさせて申し訳ありません』と謝ってしまいましょう。謝罪をしたからといって、法的責任を認めることにはなりません」
反論はせず、相手の言い分をしっかりと聞くことも重要だ。その上で店側の見解を相手に提示するが、約束と捉えられることは言うべきではない。
「責任者がいてもその場では回答せず『持ち帰って検討します』と対応します。相手の勢いにのまれてしまったり、言った言わないの話に発展する恐れがあるためです」
その後も電話などで執拗に追及してくる場合は「誤解が生じないように、記録が残るメールでやり取りしましょう」と提示するのが効果的。電話よりもメールは手間がかかるので、面倒になってトーンダウンするケースが多いという。
「カスハラの多くは、誰かにワガママを聞いてほしい“かまってちゃん”なんです。理屈が通じる相手ではないので、理不尽な要求に対しては『申し訳ありません。できません』という対応を淡々と繰り返すのがベストです。相手はつまらなくなって、長くても1か月くらいで必ず姿を消します」
現場任せにするのではなく、企業側がカスハラを想定しておくことも必要だろう。UAゼンセンの見解を波岸氏は次のように述べる。
「社内でカスハラの対応策や窓口をあらかじめ決めておき、一定の判断基準をつくっておくといいですね。行き過ぎた迷惑行為などの禁止・処罰規定を定めた“悪質クレーム対策法”の制定も必要でしょう。サービスを受ける側も与える側も、本来は対等な立場のはず。啓発活動もしながらお互いが尊重し合える社会をつくっていきたい」
客商売をしている限り、カスハラは必ず起きるもの。毅然とした対応で乗り切りたい。
◆<怖がらなくていい! カスハラの脅し文句>
●「ネットに書くぞ!」……「悪評を書く人は何をしても書くと割り切って、星1の評価よりも星5を多く獲得することを目指しましょう」(石崎弁護士)
●「訴訟するぞ!」……「理不尽な要求をもとに裁判を起こしても勝てるわけがないので、実際に行動を起こす人はまずいません。たいてい口だけです」(同)
●「消費者センター」に訴えるぞ……「カスハラ対応に慣れている人たちにバトンタッチしてもらえるので、むしろ好都合。こちらは何も痛くありません」(同)
取材・文/西谷 格 ツマミ具依