なぜ組織の上層部ほど無能だらけになるのか? 張り紙が増えると事故も増える理由とは? 飲み残しを放置する夫は経営が下手?
6万部突破のベストセラー『世界は経営でできている』では、東京大学史上初の経営学博士が「人生がうまくいかない理由」を、日常・人生にころがる「経営の失敗」に見ていく。
※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。
純粋勉強批判:理解一辺倒の罠、暗記一辺倒の罠
考えてみれば、我々は一生さまざまな場面で勉強を続ける。
学校での試験勉強、受験勉強、資格取得の勉強、昇進審査のための勉強、営業の勉強、話し方の勉強、マナーの勉強、料理の勉強、勉強法の勉強、間違った勉強法を見分ける勉強……などなど、勉強の対象は「勉強」という字がゲシュタルト崩壊するほど多岐にわたる。
そもそも生物としては脆弱な人間がこれだけ栄えたのは、先人の知恵や知識を活用して自然に適応してきたからだ。人間にとって勉強は生き抜くための必須の活動だといえる。
しかし人間がこれだけ勉強漬けの生活を強いられているからこそ、勉強は嫌いだという人もまた多い。
だが、勉強嫌いの多くは、勉強が徒労に終わるから、勉強しても成果が出ないから勉強がつまらなくなったのではないだろうか。そして、勉強が苦痛になるのは勉強にまつわる「経営」に原因がある。
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たとえば難しい英文を前にして、あるいは初めて出会う数式を前にして、いつまでもうんうんとうなっているような人がいる。そのうち知恵熱を出して寝込んでしまったりする。
もちろん基礎的な知識が身についた後ならば、問題を解くための実践の場として思考をめぐらす時間も必要である。
だが、英語や数学の基礎知識を蓄積する目的においてはこの悩みの時間は無駄だ。知らないものはいくら悩んでも分かるようになるはずがない。それならば知識をいったん暗記して後から理解に努める方が、無駄に苦しまずにすむかもしれない(といっても、すぐ次を読んでいただければ分かる通り私は暗記至上主義者ではない)。
ところが今度はすべてを暗記するという別の苦行を始めてしまう人もいる。たとえば、英語が読めるようにならないからと単語を丸暗記しようとする。大量の単語を暗記したのに読めない英文に出会う。ちくしょう、とばかりに、もっともっと多くの単語を暗記しようとする。そのうち辞書を丸暗記しようとする。だが「abandon」に到達したあたりで分厚い紙の迫力の前についに気合と根性も尽き果てる。
こうして「単語さえ覚えられれば……」と涙で辞書を濡らす。
よく考えてみれば、イギリス人やアメリカ人でさえ辞書に載っている単語の大部分を知らずに一生を終える。だから「単語を知らないから英語が読めない」わけではないはずだ。
歴史や法律などの一般に暗記科目と呼ばれるようなものでも、分厚い用語集をはじめから終わりまですべて暗記してしまおうとする人がいる。しかし用語集には無味乾燥な解説が並ぶ。こんなものを暗記できる人の方がどうかしている。根性で必死で食らいつく。本当に、文字通り、ヤギ顔負けに用語集を一ページずつ食べながら、メェメェ鳴きながら用語を覚えていく人もいる。
そうまでして暗記しても試験では点数が取れない。負けるか、とばかりにますます細かい用語を暗記するがいつまでたっても結果は出ない。こうして日本史・世界史用語集の前に「無条件降伏」する……。
哲学、社会学、経済学、経営学などの学問に興味を持った人も似たような状況におちいる。そうした人は、興味を持った学問の中で古典/定番とされている大著に最初から手を出す。SNS等で見かけた「○○学をやるなら、難しくとも最初から原著に当たれ」という専門家らしき人の至言に影響される(専門家も大抵は入門書しか読んでいないのは秘密だ)。
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こうした人は、その大著を、真面目に、最初から最後まで一ページずつ理解しようとする。分からないところがあると立ち止まって何度でも読み返す。こうしていっこうにページをめくれない。そうこうしているうちにあまりに高尚すぎるとあきらめてしまう。
こうなってしまうと、どんな名著も「お洒落なカフェで読んで周囲に知性をアピールするアイテム」くらいにしか役立たなくなる(この場合「周囲からどう見えているのか」に神経が集中するあまり、ますます書籍の内容理解は進まないというおまけも付く)。
だが、大著が難解なのは著者自身も混乱しているからである。
なぜならば人間の思考は始まりも終わりもなく、行っては戻ってぐるぐる回っている「円環」だが、本は表紙と裏表紙が必ずある「直線」だからである。だから著書の最初に書いてあることが著書の終わりを知らないと一切理解できないことなどはざらにある。
そのため、何らかの学問を学びたいときも、入門書で全体観を把握してしまうか、難解な本は「とにかくページをめくってしまって全体を理解してから二回目に精読する」方が理解しやすい。
つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。