意識高い系が飲む“リアル天然水”は「病原菌だらけ」と専門家 米シリコンバレーで大ブーム&大論争

高齢社会の進展を受けてか、日本は昨今、健康ブームに沸いている。週刊誌では常に健康に良い食べ物や運動法などが大々的に紹介され、テレビでも健康に関する話題が目立つ。

そんななか、欧米では最近、“健康と水”をめぐって大きな論争が起きている。

どういうことか?。米ではいま、濾過(ろか)や殺菌処理がなされていない自然の泉からの“湧き水”を、健康に良いとの理由で大々的に販売する新手のビジネスが登場。

これが西海岸などで高い人気を集めているのだが、この未処理の“湧き水”を巡り、支持派と反対派が対立しているのだ。

■“純水”すぎる…糞便、寄生虫

昨年の12月29日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)や1月2日付の米経済系ニュースサイト、ビジネスインサイダー、同4日の英紙デーリー・メール(電子版)などが伝えているのだが、この“湧き水”、グーグルやアップルといった名うてのハイテク企業の本拠地で知られる米西海岸のシリコンバレーで一大ブームを巻き起こしているという。

約3年前、米サンディエゴの企業が手がけたのが始まりだが、売り上げが倍々ゲームで増加。シリコンバレーを含むサンフランシスコのスーパーマーケットでは、米の「ライヴ・ウォーター」という振興企業の“湧き水”(オレゴン州のオーパル・スプリングスから採取)を販売している。

値段は2・5ガロン(9・47リットル)で36ドル99セント、日本円にして約4200円と高価だが、品切れになることもしばしば。そのため、1月2日には38ドル49セント(約4350円)に値上がっていたとのこと…。

「ライヴ・ウォーター」だけではない。雨水を集めて飲料水にするシステムを提唱するアリゾナ州の振興企業「ゼロ・マス・ウォーター」にはベンチャーキャピタルが何と2400万ドル(約27億円)を融資。昨年12月から全米規模でのサービスを展開するなど、追随する企業が増えているのだ。

こうした未処理の“湧き水”を提供する企業では「古代からの帯水層を通ってわき出ている水で、水源はカバーで覆ってあり、細菌などが水に入ることはない。“湧き水”をびん詰めする施設も無菌状態。オレゴン州の地元民も半世紀以上にわたり、この未処理の“湧き水”を飲んでいる」(ライヴ・ウォーター社のホームページより)と安全性を強調。

支持派のユーザーたちも「水道水こそ(虫歯予防のため)フッ化物を添加しているほか、鉛や塩素なども含んでおり、人体に有害である」「水道水は、濾過や殺菌処理の過程で自然の“湧き水”に含まれる天然のミネラルや有益なバクテリアが除去されている」と主張するなど“湧き水”の優位性を訴える。

しかし研究者や専門家たちの意見は完全に真逆だ。例えば食品の安全性の問題に関する専門家で弁護士のビル・マーラー氏は前述のビジネス・インサイダーに対し「あなたが病気の原因と考えるほとんど全ての物は水中で見つかる」と前置きし「こうした未処理の“湧き水”は、最も清潔な川からのものでも動物の糞(ふん)便を含むことがあり、その糞便には寄生虫(ジアルディア)がいる。それに寄生されると嘔吐(おうと)や下痢などが起き、年間約4600人が入院させられる可能性がある」と明言。

さらに「昨年、カリフォルニア州ではA型肝炎で20人が命を落としたが、こうした病気のほか、大腸菌やコレラが未処理の“湧き水”を介して多くの人々に伝染していく」と説明。

「濾過や殺菌処理された水が一般的になっているため、ほとんどの人は原水(未浄化の水)と呼ばれるものがどれほど危険か理解していない」と警告するなど、真っ向から対立している。

フッ化物を含まないなど、日本の水道事情は欧米とかなり違うようなので、安易に比較はできないが、健康にこだわり、天然水入りのウオーターサーバーを設置する一般家庭も少なくない現状を鑑(かんが)みれば、日本でもそのうち“水と健康”について、欧米とは異なる形での論争が起きるかもしれない…。

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