愛媛県「まじめ」な県民性強調する動画のはずが… 配慮に欠ける自虐PRに「ふまじめだ!」と批判噴出

愛媛県が「まじめ」な県民性を強調するPR動画を公開したところ、内容の一部が「ふまじめだ」とお叱りを受ける騒ぎになっている。地方自治体の自虐PR動画がトレンド化しつつあるが、何が落とし穴だったのか。

 PR動画は、愛媛のセールスポイントを探る県庁内の会議を舞台としたドラマ仕立ての内容。1人の職員が「まじめな県民性が魅力」と提案し、その根拠として「自転車乗車時のヘルメット着用率の高さ」や「ボランティアに取り組む時間が全国1位」が挙げられた。

 批判を集めたのは、「介護看護をしている時間」と「彼氏がいない独身女性の多さ」がいずれも全国1位という部分で、ネットでは「行政に頼れないから自分で(介護を)やるしかないということでは」「彼氏がいるのはふまじめ?」といった声が寄せられた。

 3日の県議会一般質問でも、武井多佳子議員(ネットワーク市民の窓)が、「彼氏の有無や介護・看護時間を長さをまじめな県民性と結びつけるのは問題ではないか」と動画の配信中止検討を求めた。

 動画を企画した県プロモーション戦略室の担当者は、介護時間の長さや彼氏がいない独身女性の多さについて、「まじめにつながる慎み深さと、人を思いやる優しい気持ちを表している」と説明、配信を中止する予定はないと明らかにした。

 「まじめ」をあえて極端に打ち出す県の手法は、地方のPR戦略でおなじみの「自虐表現」の一つだといえる。

 優れたローカルCMや地方PRを表彰する「ぐろ~かるCM大賞2019」で特別賞に選ばれた長崎県大村市のPR動画は、「大村市なんて大嫌い」と突き放す一言から始まり、「魚がおいしいなんていまさらだし、海が近いから当たり前」と逆説的に市の魅力を宣伝、移住や定住を呼びかけている。

 同じく特別賞に選ばれた大分県津久見市のPR動画「津久見市役所おばけ屋敷篇」は、老朽化した市庁舎をお化け屋敷に見立てて市の魅力や特産品を紹介している。

 賞を運営する「ぐろ~かるCM研究所」の鷹野義昭所長は「自虐風に地域を紹介する広告表現は、謙虚な姿勢の日本人らしさとの親和性が高いが、最終的には郷土愛にあふれている。お土産を渡す際『つまらないものですが』と一言添えるが、本当につまらないとは思っていないのと同じだ」と分析する。

 愛媛県の動画が批判を受けた理由について、鷹野氏は「『まじめ』という着眼点は面白いが、看護・介護に従事する人々や独身の女性本人が見てどう思うかに想像が及んでいなかったということは、やはりミスだった」

 動画が話題になったことで、愛媛県民がまじめだとの認識が広がったのも事実。そこまでまじめに考えていたのならすごいが…。

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