慰安婦記念日 「反日」迎合を強める韓国政治

韓国の独善的な動きによって、歴史問題を巡る日本との溝が一段と深まった。これでは、「未来志向」の日韓関係の構築は遠のくばかりだ。

韓国国会で、8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」と定める改正法が可決された。賛成205、反対ゼロ、棄権8で、与野党ともに支持した。近く公布され、その半年後に施行される。

改正法は、記念日制定の目的を「慰安婦問題を国内外に知らせる」ことだと明記した。政府と地方自治体に対し、行事を催し、広報する努力を求めている。

政府が元慰安婦に関する政策を立案する場合には、本人の意見を聴取する条項も盛り込まれた。

元慰安婦の金学順さんが、1991年に初めて名乗り出て、取材に応じたのが8月14日だ。記念日の法制化により、毎年この日が来るたびに、慰安婦問題が公に蒸し返されることになる。

植民地支配から解放された翌15日の「光復節」と合わせ、韓国人の反日感情が引き継がれていくのではないか。日本人の韓国観が厳しさを増すのは避けられまい。

看過できないのは、文在寅政権が、慰安婦問題に焦点を当てる施策を推進していることだ。

7月に策定した国政5か年計画で、記念日の制定や「歴史館」の建設を打ち出した。国立墓地に追悼碑を建てる方針も発表した。

ソウル高裁は、慰安婦に関する学術書の著者、朴裕河教授に対し、名誉 毀損 きそん で有罪判決を言い渡した。トランプ米大統領の歓迎夕食会には、元慰安婦が招かれた。

政府・国会・司法が そろ って、韓国の市民団体が あお る反日運動に迎合する。極めて深刻な事態だ。

日韓両政府は、2015年の合意で、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認している。双方が歩み寄った貴重な成果であり、再交渉の余地はない。

合意には、当時の朴槿恵政権が元慰安婦から聞いた要望も反映されている。元慰安婦の7割は、合意に基づき、韓国政府が設立した財団から現金支給を受けた。文政権はこうした事実こそ、国民に広く知らせるべきではないのか。

菅官房長官が記念日について、「日韓合意の趣旨に反する」と、遺憾の意を表明したのは当然である。首脳会談などの機会に、合意の着実な履行を促すべきだ。

訪韓中だった公明党の山口代表は、日韓関係全体に悪影響が及ぶことへの懸念を示した。日韓議連を通じた議員交流の強化など、多角的な努力も必要だろう。

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