韓国のサムスン電子が、ライバルである台湾の電子機器メーカー、HTCのスマートフォンなどについて、アルバイト学生を雇い、ネット上に「誹謗(ひぼう)中傷」を書き込ませていたことが発覚した。台湾の公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当)が4月17日までに、調査に入った。スマホ市場で快進撃を続けるサムスンだが、HTCを筆頭とする台湾や中国の新興勢力が猛追。成長に陰りが出ており、その焦りが、“ネガティブキャンペーン”につながったとみられている。
学生雇いネット投稿
「(ネット上で)匿名のコメントを投稿するマーケティング活動を停止しました。われわれは、今回の事件を残念に思います。再発防止のため、従業員への教育とトレーニングを強化します」
サムスンの台湾法人である「サムスン電子台湾(SET)」は17日までに、自社の公式フェイスブックで、やらせによる中傷を事実上認める謝罪文を掲載した。
英BBC放送(電子版)や英IT系ニュースサイトのPCアドバイザーなどによると、今回の“やらせ”は、台湾国内でサムスンに反感を持つ人たちが情報交換をするサイト「台湾サムスンリークス」への投稿がきっかけで発覚した。
報道によると、STEから依頼を受けた現地の広告代理店が複数の学生アルバイトを雇い、彼らにサムスンのスマホ「ギャラクシー」シリーズを褒める一方で、HTCの「ONE」シリーズを貶(けな)すコメントをネット上に投稿するよう仕向けていたという。
「俺の彼女はONEを使っているが、しょっちゅう故障していた。サムスンのギャラクシーの方が優れていたよ」
「ONEよりもギャラクシーの方が、電池が長持ちして、画面もきれいだ」
ネット上では、こんなコメントが確認されており、AFP(フランス通信)などの海外メディアは「卑怯(ひきょう)なたくらみ」と、サムスンを厳しく非難している。
やらせが事実だと確認されれば、SETと広告代理店は、公平交易委員会から最高2500万台湾ドル(約8200万円)の罰金を科されるという。
中国・台湾勢が台頭
サムスンは今年初めにも、スマホのカメラ機能に関する虚偽広告で、30万台湾ドル(約98万円)の罰金を科されている。罰金は微々たるものだが、お粗末なマーケティング戦略が相次いで露呈した。
巨額投資で液晶テレビやスマホの汎用(はんよう)化を進めてシェアを拡大し、日本勢を駆逐したサムスンだが、自らと同じ手法で中国・台湾勢が台頭。格安のスマホを売り出し、頭角を現してきたHTCはサムスンにとっても脅威となっている。さらに日本の「アベノミクス」政策による円安進行で、好業績を支えてきたウォン安が反転し、ウォン高の逆風も吹き始めた。
サムスンは先月(3月)、「ギャラクシー」の最新機種の発表会を米ニューヨークで大々的に開催するなどPR活動やマーケティングに力を入れ始めたが、それが裏目に出たようだ。