手足口病や新型コロナ、溶連菌など、日本各地で猛威をふるう様々な感染症。中には家庭内で次々とうつる、いわば“感染症ドミノ” に陥った家族もいた。夏休みを前に、警報レベルとなっている感染症の実態を追った。
5月に入り手足口病の感染者数が急増
東京・港区の『クリニック ばんびぃに』には、体に発疹が出た子どもが次々に訪れていた。病名は手足口病だ。
クリニック ばんびぃに 時田章史院長:
ちょっと喉見ますね。あー、喉にも1カ所できてますね。
そうですね。まあ軽いけど、手足口病でいいでしょうね。
母親:
首の方に炎症があるので…。湿疹が結構手とかにまだぶつぶつあって、かゆいみたいで掻いちゃって…。ちょっと食欲が落ちてて、あんまり固めのものというか、お米を食べられなくなっちゃって…。
手足口病は、子供を中心に夏に流行するウイルス感染症で、その名の通り、手や足、口の中などに発疹が出る。
クリニック ばんびぃに 時田章史院長:
最初に喉が痛くなって、そのあと、あるいは同時に手のひらとか足の裏とか、あとは肘とかお尻に赤みを持った小さな発疹、中には水泡を伴うような、時にお熱を出すお子さんもいらっしゃいます。
東京都では5月に入ってから手足口病の感染者数が急増。時田院長は「今、小児科の外来で、一番患者さんの数の多いのは、やはり感染症としては手足口病かと思います」と話す。
1医療機関あたり、週に5人を超えると出される警報は現在、40の都府県に広がっている。
飛沫や接触などで感染する手足口病は、アルコール消毒などは効きにくいため、石けんで流水による手洗いが有効だというのだが、難しいのは家庭内での感染予防だ。
“感染症ドミノ”に陥った家族
Mr.サンデーの取材に答えてくれたのは、夫と2歳の娘の3人で暮らす神奈川県在住のAさん。6月5日、最初に症状が出た娘は、流行中の手足口病と診断された。
Aさん:
6月の初めに私の姉が、甥っ子も連れてきていたんですけど、帰った後に甥っ子が手足口病っていうことがわかって、その数日後、娘が発熱して…。
熱も39度まで上がって、すごい辛そうだったんですけど。ちょっと良くなってきたかなっていうところで…。
(以下引用)
子供の手足口病が妻に感染してしまった
(以上引用)
SNSで、こうつぶやいたのはAさんの夫だ。娘が発症した3日後、母親のAさんに発疹が出始めたのだ。
関連するビデオ: 【定点把握】新型コロナ感染者が8週連続で増加 「溶連菌」と「手足口病」は警報レベル続く 福岡 (FBS 福岡放送ニュース)
about:blank
読み込み済み: 32.19%再生
現在の時刻 0:02
/
期間 0:55品質の設定全画面表示
FBS 福岡放送ニュース
【定点把握】新型コロナ感染者が8週連続で増加 「溶連菌」と「手足口病」は警報レベル続く 福岡ミュート解除
0
さらに翌日には、39度の発熱。1日で下がったが、喉の痛みがAさんを苦しめた。「痛みがもうひどすぎて、しゃべるのも痛いし、ご飯も食べられないので、数日間は味なしのそうめん」を食べて過ごしたそうだ。
そして足の裏には、大きな赤い発疹が2つほど。症状は軽いように思えるが…。
(以下引用)
6月12日の夫のSNSより:
手足口病の妻が、足の裏の発疹が痛くて歩けないみたい。
(以上引用)
Aさん:
もう火傷したみたいにピリピリ痛くて、触るのも痛いし。足の裏の発疹が痛すぎて歩けなくて、家の中の移動もキャスター付きの椅子でコロコロ動いたり…。
(手も)キーボード打ったりするときに、そこが痛かったり…。
ところが、手足口病の一家感染は、始まりに過ぎなかった。
喉の痛みやいちご舌…溶連菌感染症も猛威
子供の手足口病がうつり、苦しんだ母親のAさん。ところがその後…。
(以下引用)
7月5日の夫のSNSより:
手足口病が治ったら次は溶連菌…。
(以上引用)
「手足口病が収まって、1~2週間は落ち着いていたんですけど、7月2日に今度は娘がまた発熱して、(3日に)検査したら溶連菌が陽性」とAさん。手足口病から回復した娘が、今度は溶連菌に感染し、さらに翌日にはAさんや夫にも喉の痛みが現れる。「私も夫も熱は出なかったんですけど、喉が痛くて、みんなで溶連菌だねっていう話をしてた」と振り返る。
溶連菌による急性咽頭炎は、子どもに多い喉の風邪で、春先から初夏に比較的多くみられる細菌感染症である。38℃以上の発熱や倦怠感、喉の痛み、いちご舌などが現れるのが特徴だ。
溶連菌は娘からAさん夫婦に感染したとみられる。だが、2日後の6日には、「今度は夫がまた発熱して、病院に行ったら、今度はコロナって言われて」と、次は、夫が新型コロナウイルスに感染。4日後には平熱に戻ったが、その夜、妻のAさんも39度の発熱があった。
入念な手洗いやタオルの使い分け、家の中でもマスクを着用するなど、感染対策をしていたのだが、娘の手足口病から始まり、溶連菌、新型コロナと、家族はまさに“感染症ドミノ”に陥ってしまった。Aさんは「すごい負の連鎖が続いていて、もうこれで終わりにしてほしいな」と願う。
熱は下がったものの、今も咳の症状が続いているというAさん。実は今、その新型コロナがじわじわと感染を広げている。
「Mr.サンデー」が取材したのは、発熱外来を持つ千葉市中央区の『東京ビジネスクリニック ペリエ千葉エキナカ』。
東京・千葉に5つあるクリニックでは、現在、1日300人から400人の発熱患者が来るという。
東京ビジネスクリニック 内藤祥医師:
最近ですと本当に2人に1人ぐらい検査をすると、コロナが陽性というような感覚。特に7月に入ってからは、急激に多くなっているという印象があります。
厚生労働省によると、新型コロナの感染者数は、すべての都道府県で前の週を上回り、1医療機関あたりの感染者数も9週連続で増えている。
新型コロナは変異株「KP.3」が流行
急増の原因となっているのは何か。
京都大学大学院 医学研究科 西浦博教授:
KP.3というオミクロン株のうちの1つの株が中心となって、今の流行が起こっています。
現在、新型コロナの主流となっているのは、新たな変異株KP.3。その特徴は…。
京都大学大学院 医学研究科 西浦博教授:
既存の免疫を逃れるという、そういう性質を獲得したウイルスになります。
KP.3は主に喉の痛みを呈することで、それから発熱をするということが多いんですけど、これまでのコロナと似たような症状を伴うものになります。
現在、東京の「KP.3」の状況なんですけれども、大体8割を超えるコロナのウイルスが「KP.3」であるということがわかっています。
既存の免疫を免れ、強い感染力を持つという「KP.3」。さらにこの時期ならではの感染の理由があるという。
京都大学大学院 医学研究科 西浦博教授:
暑いということがあったり、あるいは今の時期、梅雨で雨が降っているというようなことがあると、どうしても屋内で滞在する時間が長くなるので、結果として伝播が起こりやすいと考えられます。
12日には林官房長官も「(新型コロナは)今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があるというふうに認識しております」と語っていた。
(「Mr.サンデー」 7月14日放送より)